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ABS情報

中国

掲載日:2022年3月31日

生物多様性条約 締約国(1993年12月29日)
名古屋議定書 締約国(2016年9月6日)
食料・農業植物遺伝資源条約 非締約国

概要

・2017年に、ABS新法(「生物遺伝資源獲得と恵益分配管理条例(草案)」)が起草され、パブリックコメントが求められていたものの、その後現在に至るまで、明確な発効時期については示されていない。
・ABS新法が発効していないため、現状では、各既存法(生物種により異なる)に従った手続きが必要。該当する既存法の把握が難しいため、中国の遺伝資源を利用する際には、中国政府(名古屋議定書NFPまたは利用する遺伝資源を管轄する関係当局)に問い合わせることを勧める。
・既存法への該当の有無に関わらず、「生物種資源の保護と管理の強化に関する通知」(下記「関連法規」1))および「対外協力と交流における生物遺伝資源の利用と利益配分の管理の強化に関する通知」(下記「関連法規」2))に従って共同研究を行う(下記「生物種毎の手続き概要」の「生物遺伝資源を利用する際の一般的な手続き」参照)。

生物種別の手続き概要

注)中国については、未だ手続きが不明な部分が多く、下記の手続き概要は参考までとし、実際に遺伝資源を利用する際には中国政府にお問合せください。

〇生物遺伝資源を利用する際の一般的な手続き
(こちらについては、既存法への該当の有無に関わらず、共通の手続きとしてご確認ください)
“生物遺伝資源”の定義
動植物と微生物の種および種より下の分類単位、これらの生物遺伝機能を含む材料・微生物、ならびにそれらから生じる情報・資料(*人類の遺伝資源を含まない)であって、実際の、または潜在的な価値を有するもの。
*他の既存法(中華人民共和国人類遺伝資源管理条例、生物安全法など)で取決めがあるため、注意。
生物遺伝資源に関わる国際共同研究
利益配分等を明記した合意書を締結し、中国人研究者の十分な関与を図る。また研究活動は原則、中国国内で行う。中国国外での研究が確かに必要と認められる場合には、生物遺伝資源を管轄する関係当局の承認を得る。
外国人による野外視察
関係当局の承認が必要。
外国人による採集、購入
国務院の関係当局に承認を得る。野生からの採集、購入は禁止。
中国国外への提供
国務院の関係当局から承認を得る。また、輸出関連資料・情報の写しを国務院の環境保護部門に提出する。またプロジェクト契約書において、生物遺伝資源の提供者、研究目的、応用可能性等の情報を明記し、知財権の共有や技術移転、第三者移転の条件、利益配分等についても取決めを行う。
中国国外への持出し、送付
関係当局が発行する承認証明書を持って、出入国検査検疫機構へ申告を行う。
絶滅危惧種や国が保護する野生動植物、その産物の輸出
絶滅危惧種輸出入管理機関から輸出許可証を取得する。
研究成果の発表
生物遺伝資源の提供者を開示する。

〇野生動物(貴重で絶滅の危惧があり、国が重点的に保護する野生動物およびその産物)
国が重点的に保護する野生動物の分類
「国家一級保護野生動物」と「国家二級保護野生動物」に分類され、「国家重点保護野生動物リスト」(5年毎に変更)に記載される。(省・自治区・直轄市が保護する野生動物は、「地方重点保護野生動物」として分類され、「地方重点保護野生動物リスト」に記載される。)
採集
禁止されている。科学研究等の特別な事情の場合には、国家一級保護野生動物については国務院の関係当局に、国家二級保護野生動物については省・自治区・直轄市の人民政府の関係当局に、捕獲特別許可証を申請する。
*国家重点保護野生動物に該当しない野生動物の捕獲については、県レベル以上の地方人民政府の関係当局に捕獲許可証を申請する。
販売、購入、利用
禁止されている。科学研究等の特別な事情の場合には、省・自治区・直轄市の人民政府の関係当局の承認を得る。
外国人による野外視察や撮影
省・自治区・直轄市の人民政府の関係当局の承認を得る。
人工繁殖
省・自治区・直轄市の人民政府の関係当局に、人工繁殖許可証を申請する。

〇家畜(牧畜法「家畜家禽遺伝資源保護リスト」に記載のある家畜。卵、胚胎、精液等を含む)
国際共同研究における利用
省・自治区・直轄市の人民政府の関係当局に申請を行う。国際共同研究で家畜家禽遺伝資源を利用する組織は、法人資格を取得している中国の研究機関、中国の単独出資企業とする。
中国国外への輸出
省・自治区・直轄市の人民政府の関係当局(牧畜獣医行政主管部門)に申請を行う。また、輸出審査承認書(有効期間:6か月)に基づいて検疫手続きを行う。
*中国に特有の、または新たに発見された家畜家禽遺伝資源の輸出や国際共同研究は、禁止されている。

〇陸上野生動物(重点的に保護される陸上野生動物およびその産物)
中国国外への輸出
輸入者の所在地の省・自治区・直轄市の人民政府の関係当局(林業管理当局)の審査を経て、国務院の関係当局(林業管理当局)に報告し承認を得る。

〇水生野生動物(絶滅の恐れがあり、国が重点保護する水生野生動物およびその産物)
採集
禁止されている。科学調査等の特別な事情の場合、捕獲特別許可証を申請する。国家一級保護水生野生動物の場合は、申請者の所在地および捕獲地の省・自治区・直轄市の人民政府の関係当局(漁業行政主管部門)が署名した意見書を添え、国務院の人民政府の関係当局に申請を行う。国家二級保護水生野生動物の場合、申請者の所在地の県レベルの関係当局(漁業行政主管部門)が署名した意見を添え、国務院の関係当局(漁業行政主管部門)に申請を行う。
外国人による中国国内での科学調査、標本採集、撮影等
保護水生野生動物の所在地の省・自治区・直轄市の人民政府の関係当局に承認を得る。
販売および購入
禁止されている。科学研究等の特別な事情の場合、国家一級保護水生野生動物については、省・自治区・直轄市の人民政府の関係当局に申請を行い、同局の承認を得た後、国務院の関係当局に申請を行う。国家二級保護水生野生動物については、省・自治区・直轄市の人民政府の関係当局に申請を行う。
飼育および繁殖
国家一級保護水生野生動物については、国務院の関係当局に飼育繁殖許可証を申請。国家二級保護水生野生動物については、省・自治区・直轄市の人民政府の漁業行政主管部門に飼育繁殖許可証を申請する。
県境(中国国内)を越える輸送
捕獲特別許可証または飼育繁殖許可証に基づき、県レベルの人民政府の関係当局に申請し、省・自治区・直轄市の人民政府の関係当局に承認を得る。
中国国外への輸出
輸出者の所在地の省・自治区・直轄市の人民政府の関係当局の審査を受け、国務院の関係当局に申請を行う。

〇野生植物(国が重点的に保護する野生植物)
国が重点的に保護する野生植物の分類
「国家一級保護野生植物」と「国家二級保護野生植物」に分類される。
(*省・自治区・直轄市において保護されるものは、「地方重点保護野生植物」に分類される。)
採集
国家一級保護野生植物:禁止されている。科学研究等の特別な事情の場合、国務院の関係当局、または採集地の省・自治区・直轄市の人民政府の関係当局に採集許可証を申請する。
国家二級保護野生植物:採集地の県レベルの人民政府の関係当局から、署名付きの意見書の交付を受け、省・自治区・直轄市の人民政府の関係当局に採集許可証を申請する。
都市庭園・風景名勝区内の保護野生植物:予め、都市庭園・風景名勝区を管理する機関の同意を得たうえで、採集許可証の申請を行う。
販売、購入
国家一級保護野生植物:禁止。
国家二級保護野生植物:省・自治区・直轄市の人民政府の関係当局に承認を得る。
外国人による野外視察
対象の植物が所在する省・自治区・直轄市の人民政府の関係当局(農業行政部門)の承認を得る。
外国人による採集、購入
禁止。
中国国外への輸出
国務院の関係当局による承認を受ける。
*名称未定または新たに発見された野生植物については、中国国外への輸出禁止。

〇作物品種、種子関連(国が重点保護する生殖質資源)
採集
禁止されている。科学研究等の特別な事情の場合、国務院または省・自治区・直轄市の人民政府の関係当局(農業または林業主管部門)の承認を得る。
中国国外への提供、国際共同研究での利用
省・自治区・直轄市の人民政府の関係当局(農業または林業主管部門)に申請を行う。申請を受理した当局は、国務院の関係当局に申請を行う。

〇中薬品種(保護品種)
保護を受ける中薬品種の分類
「中薬一級保護品種」と「中薬二級保護品種」とに分類される。保護期間は、一級品種が30年、20年、10年、二級品種が7年。
中薬一級保護品種の処方構成、技術製法
保護期間中は、公開してはならない。国外に譲渡する場合、関連する秘密保持規程に従う。

〇ヒト(ヒト遺伝資源。ヒト遺伝資源材料およびヒト遺伝資源情報を含む)
採集、保管、利用、中国国外への提供
関連規定に従って、倫理審査が行われる。また、事前に本人からインフォームドコンセントを得る。また、国務院の関係当局(科学技術行政部門)の承認を得る。
外国人による採集、保管、中国国外への提供
禁止されている。
外国人による研究利用
中国の機関や企業との共同研究を行うものとし、共同で国務院の関係当局に申請を行う。また、中国側機関が研究の全過程において参加し、研究で生じたデータのバックアップが中国側に提供されること。特許出願は、双方の共同出願とする。また研究終了後6か月以内に、国務院の関係当局に共同で報告を行う。
中国国外への輸送、携帯
国務院の関係当局から国外搬出証明を取得する。
外国人へのヒト遺伝資源情報の提供
国務院の関係当局に届出を行う。中国のヒト遺伝資源を利用し国際共同研究を行って生じたヒト遺伝資源情報は、双方が利用できるものとする。

 

関連法規

各関連法規の和訳は、あくまで「暫定訳」「仮訳」です。ご参考程度にご利用ください。なお、下記にあげる法律が現存する全ての法律とは限らず、また、法律に付随しているリスト等は随時更新される可能性があります。ご注意ください。

1)国務院弁公庁 生物種資源の保護と管理の強化に関する通知
原文(外部リンク)
ABS学術対策チーム仮訳

2)対外協力と交流における生物遺伝資源の利用と利益配分の管理の強化に関する通知
原文(外部リンク)
ABS学術対策チーム仮訳

3)生物遺伝資源採集技術規範
原文(外部リンク)
環境省暫定訳(外部リンク)

4)中華人民共和国 野生動物保護法
原文(外部リンク)
ABS学術対策チーム仮訳
国家重点保護野生動物リスト(外部リンク) (2021年版)

5)中華人民共和国 牧畜法
原文(外部リンク)
ABS学術対策チーム仮訳(第二章のみ)
・全国家畜遺伝資源品種リスト(2021年版)http://www.moa.gov.cn/govpublic/nybzzj1/202101/P020210114550330461811.pdf

6)中華人民共和国 家畜家禽遺伝資源の輸出入と対外協力研究利用に関する審査許可弁法
原文(外部リンク)
ABS学術対策チーム仮訳

7)中華人民共和国 陸生野生動物保護実施条例
原文(外部リンク)

8)中華人民共和国 水生野生動物保護実施条例
原文(外部リンク)
ABS学術対策チーム仮訳

9)中華人民共和国 絶滅危惧種の野生動植物の輸出入管理条例
原文(外部リンク)

10)中華人民共和国 野生植物保護条例
原文(外部リンク)
ABS学術対策チーム仮訳
・国家重点保護野生植物リスト(2021年8月7日公布) http://www.gov.cn/zhengce/zhengceku/2021-09/09/5636409/files/12887ada7c174d199e7ecd8996d07340.pdf

11)中華人民共和国 種子法
原文(外部リンク)
ABS学術対策チーム仮訳(第二章のみ)

12)農作物生殖質資源管理弁法
原文(外部リンク)
ABS学術対策チーム仮訳

13)野生薬用資源の保護と管理に関する規則
原文(外部リンク)
国家重点保護野生薬用種リスト(外部リンク) (1987年版。以降、改訂があったかは不明)

14)中華人民共和国 中医薬法
原文(外部リンク)

15)中華人民共和国 中医薬条例
原文(外部リンク)
ABS学術対策チーム仮訳(第三章のみ)

16)中薬品種保護条例
原文(外部リンク)
ABS学術対策チーム仮訳

17)輸出入環境保護用微生物菌剤環境安全管理方法
原文(外部リンク)

18)衛生部、農牧漁業部、中国特許局 特許手続に用いる微生物菌(毒)種、培養物入国検疫暫定規定
原文(外部リンク)

19)中華人民共和国 生物安全法
原文(外部リンク)
ABS学術対策チーム仮訳(第六章のみ)

20)中華人民共和国人類遺伝資源管理条例
原文(外部リンク)
ABS学術対策チーム仮訳

21)無形文化遺産保護法
原文(外部リンク)

22)中華人民共和国 出入国動植物検疫法
原文(外部リンク)

連絡先

ABSについての国内中央連絡先 (National Focal Point: NFP):

https://absch.cbd.int/en/countries/CN

その他

・ABS情報交換所 http://www.absch.org.cn/
(伝統的知識に関する情報やデータベース等にもアクセス可能)

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