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学術研究 ABS ツールキット IV-C

遺伝資源利用研究のための事前情報に基づく同意(PIC)」見本

ABS 学術対策チーム 森岡 一

はじめに

生物多様性条約第15条第5項に、「遺伝資源の取得の機会が与えられるためには、当該遺伝資源の提供国である締約国が別段の決定を行う場合を除くほか、事前の情報に基づく当該締約国の同意を必要とする。」と規定されている。この項目では、4つの重要な条件が入っている。一つは所得の機会(アクセス)許可が必要なのは遺伝資源が対象であり、生物資源ではないということである。次に、提供国が別段の決定を行う場合を除くため、提供国が別段の決定を行っているかどうか確認する必要がある。次に、事前の情報に基づくという決まりがあり、研究活動を行う前に同意をとることが必要である。最後に提供国の同意という点である。提供国の同意であって、提供国研究者の同意ではない。提供国の同意を与える機関は権威ある当局(Competent National Authority)と呼ばれている。一般的に同意のことをPrior Informed Consent (PICと略)とよばれているが、多くの提供国の場合、許可(Permit)を呼ぶ場合が多い。

同意を与える権威ある当局は、提供国の制度によって異なる。一か所が許可を与える国もあれば、多くの政府系機関に権限を移譲している場合もある。また研究内容によっても異なるので、提供国の情報提供機関(National Focal Point)に問い合わせることが必要となる。

PIC取得で課題となるのは申請書の中身と審査期間である。多くの申請書では、研究目的に従い、提供国内での活動のためのアクセス許可と遺伝資源の国外移動の許可、その他の許可(特許出願など)がある。したがって、目的に合わせて取得すべきPICは異なる。提供国内で研究を行い、収集したサンプルを日本に移動させる場合は、アクセス許可と国外移動許可の2つが必要となる。また特許出願等を考える場合にはそのための許可も必要となる。

PICは政府機関が与えるものなので、制度を作っている国では決まった標準書式を用いる場合が多い。許可申請に必要な書類として、研究計画書や素材移転契約書、利益配分契約書など共に、申請人の身元、能力、資金等を示す書類が必要になる場合がある。したがって、許可申請に必要な書類をよく精査する必要がある。インドでは許可を入手してから契約を行う順序になっているが、その他の国では、提供国内の当事者との契約が最初に行い、その契約書を申請書類に添付する形式が多い。

ここでは、PIC制度を整備したいくつかの国の発行している標準書式を掲載している。制度を整備していない国の場合であっても、標準形式を用いることは有用であると考えられるが、まず提供国の情報提供機関で確認することが最も重要である。

PICの具体的取得手順について、各国毎にまとめたクイックリファレンスチャートを作成する。そのため、本書では許可申請の書式のみをまとめている。今後提供国では制度整備が行われ、本書で記載した書式が最終版でなくなる可能性が高い。したがって、実際にPIC許可申請する場合、本書の書式をそのまま使う前に、最新書式がないかチェックすることが必要である。

学術研究ABSツールキット IV-C
遺伝資源利用研究のための「事前情報に基づく同意(PIC)」見本
btn_dl_pdf
事前の情報に基づく合意(PIC)の取り方マニュアル
フィリッピン標準研究提案
インド生物資源伝統的知識アクセス許可申請FORM I
インド研究結果海外商用目的移転許可申請FORM II
インド知的財産権出願許可申請FORM III
インド生物資源伝統的知識第三者移転許可申請FORM IV
ブータン王国のアクセス許可申請
ブータン王国遺伝資源と関連する伝統的知識アクセス申請
ブータン王国生物資源及び関連する伝統的知識第三者移転許可申請
ブータン王国知的財産権出願許可依頼申請
マレーシアサラワク州生物資源アクセス収集研究許可申請
アフリカユニオン伝統的知識同意契約
ウガンダ共和国事前の情報に基づく同意申請
南アフリカ共和国バイオ探索許可申請
南アフリカバイオ探索研究標準輸出許可申請
カメルーンリンベ動植物園共同研究覚書(PIC)
ブラジル非商用研究用遺伝遺産アクセスと輸出標準許可申請
ブラジル非商用研究用遺伝遺産アクセスと輸出特別許可申請
GEFプロジェクト事前情報に基づく伝統的知識アクセス承認(PIC)標準申請

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