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ABS情報

brazil_n_150 ブラジル

最終更新日:2022年1月17日

生物多様性条約 締約国(1994年5月29日)
名古屋議定書 締約国(2021年6月2日)
食料・農業植物遺伝資源条約 締約国(2006年8月20日)

ブラジルにおける下記用語の定義

・「遺伝財産」:植物、動物、微生物またはその他の種の遺伝的起源の情報であって、それら生物の代謝から生じる物質を含む。
・「遺伝財産へのアクセス」:遺伝財産について実施される研究または技術開発。
(解説1)「遺伝財産」:生物多様性条約・名古屋議定書の「遺伝資源」の定義とは異なり、
     ブラジルにおいては「遺伝財産」が法令の対象として定義されている。
     「遺伝財産」は「遺伝資源」よりも幅広い対象を持つ(派生物や情報を含む)ことに注意が必要である。
(解説2)「アクセス」:ブラジルでは「アクセス」の定義は、「研究・開発による利用」を指し、
     その他、多くの国で使われる「アクセス=遺伝資源への接触・入手」とは異なる。
     このため正式な手続きの上、取得されたサンプルであっても、新規の利用の際には再度、ブラジル政府に
     対する許可手続きが求められることに注意しなくてはならない

手続きの概要

○手続きの対象となる物/行為
[手続き対象物]
・遺伝財産および関連する伝統的知識(情報、派生物を含む)
(注意)伝統的知識(起源が明確になっているもの)については、事前の情報に基づく同意が得られている場合にのみ
アクセスが許可される。
[手続き対象行為]
・遺伝財産および関連する伝統的知識へのアクセス
・遺伝財産のブラジル国外への送付
・遺伝財産および伝統的知識を利用した研究や技術開発等により発生する最終製品および生殖素材の経済的利用

より具体的には *********************************************************************************************
・ブラジルの個人または法人(公的/民間)による、ブラジル国内での遺伝財産および伝統的知識へのアクセス。
ブラジルの科学技術研究機関(公的/民間)と協力関係にあり、国外に本拠地を置く法人による遺伝財産および
 伝統的知識へのアクセス。
・ブラジルの個人または法人(公的/民間)による、ブラジル国外での遺伝遺産および伝統的知識へのアクセス。
遺伝財産および伝統的知識へのアクセスを目的とした遺伝財産試料のブラジル国外への送付。
 (「送付(remessa)」の場合、送付後の遺伝財産試料に対する責任は、当該試料の受取人に移譲される。)
・ブラジルの法人(公的/民間)が、研究または技術開発の一部として国外で実施する業務のために行う、
 遺伝財産試料の発送(研究の一環としての外部機関・業者等への業務依頼など。)
 (「発送(envivo)」の場合、遺伝財産試料に対する責任は、ブラジル国内でアクセスを行う者が負う)。
解説:外国人研究者が考慮する必要がある行為は、上記の第2項目(ブラジル共同研究者を介した研究)、
   第4項目(ブラジル共同研究者からのサンプル送付)である。
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(注意)外国籍の個人による遺伝財産および伝統的知識へのアクセスは禁止されており、外国籍の法人が
それらへのアクセスを行うためには、ブラジルの法人と共同研究を行うことが必要。

○手続きの対象とならない物/行為
[手続き非対象物]
・ヒトの遺伝財産
[手続き非対象行為]
・研究または技術開発の一部でない場合、以下の行為は遺伝財産へのアクセスとはみなされない。

具体的には ************************************************************************************************
・種の同定を目的とした分子鑑定(親子鑑定、性別診断、核型分析、配列解析など)
・感染性・遺伝性の病因の同定のための臨床診断検査および診断
・粉砕、圧搾等による不揮発性油の抽出
・原材料と同じ特性を持つ不揮発性油の精製
・寄生虫、病原体、害虫、疾患媒介生物などの死亡率、成長率、増殖率を評価するための試験
・データベースの情報の比較と抽出
・遺伝財産の加工、物理的分離、殺菌、発酵、Ph測定、溶性固形物の評価
・微生物のカウント(細菌、酵母、カビ、糞便性大腸菌群、総大腸菌群など)
・食品の栄養に関する物理的、化学的特性の評価
・環境評価等を目的とした、生息生物のリスト化、調査、モニタリングなど
・生息域外コレクションに寄託する遺伝財産の分類学的同定
・抽出物、ワックス、バター、オイルの物理的、化学的、物理化学的、生化学的な特性評価
・遺伝財産や、伝統的知識を利用した製品の品質管理のための検査
・遺伝財産を検査や実験の対象生物としてのみ利用する場合
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○手続きの方法
下記手続きは、ブラジル国籍の個人または法人のみが行うことが出来る。
外国人による手続きについては、現在準備が進められている(最新情報については、都度お問合せください)。
[手続きの概要]
・CGen(遺伝財産管理評議会)が運用する、SisGen(遺伝財産と関連する伝統的知識の管理のための国家システム)への
登録(オンライン)が必要。
・下記行為の事前に、登録手続きを行う。
-遺伝財産の送付(「送付」の登録)
-知的財産権の申請(「アクセス」の登録)
-中間生成物の流通(「アクセス」の登録)
-研究・技術開発の最終/中間報告の公表(「アクセス」の登録)
-アクセスの結果として開発された最終製品または生殖素材を商業的に利用すること(「通知」の登録)
(注意)アクセスする遺伝財産や伝統的知識、またはアクセスの目的に変更が生じる場合は、新たな登録が必要。
・SisGenサイト https://sisgen.gov.br/
SisGenにアクセスするには、ユーザー登録とセキュリティモジュールのインストールが必要。
またセキュリティ上の理由から、モバイル端末からのアクセスは不可。
・手続きの詳細は、SisGenマニュアルをご参照ください。
https://sisgen.gov.br/download/Manual_SisGen.pdf (原文・外部リンク)

○チャート

*本チャートは、農林水産省「平成30年度気候変動等に対応した海外遺伝資源の取得に係る枠組み構築委託事業」において
調査・収集した情報を基にアイ・シー・ネット株式会社様が製作したものです。

関連法規

*各関連法規の和訳は、あくまで「暫定訳」「仮訳」です。ご参考程度にご利用ください。
[遺伝財産・関連する伝統的知識のアクセスと利益配分に関する法律]
1)2015年5月20日付法律第13123号
原文(外部リンク)
環境省暫定訳(外部リンク)
[上記法律第13123号の実施規則を定めた政令]
2)2016年5月11日付政令第8772号
原文(外部リンク)
環境省暫定訳(外部リンク)
[遺伝財産の利用に関する除外規定]
3)遺伝財産管理評議会 2018年9月18日付技術指針第9号
原文(外部リンク)
ABS学術チーム仮訳
[ブラジルでの採集・調査活動等について]
4)シコ・メンデス生物多様性保全研究所 2014年9月1日付規範的指示第3号
原文(外部リンク)
ABS学術チーム仮訳

連絡先

ABSについての国内中央連絡先 (National Focal Point: NFP) および 権限ある国内当局(Competent National Authority: CNA)
https://absch.cbd.int/en/countries/BR

その他

・ABS学術対策チーム主催2020年度第6回ABS講習会(2020年8月26日開催)アイ・シー・ネット株式会社様 講演資料
http://nig-chizai.sakura.ne.jp/abs_tft/wp-content/uploads/2020/12/ABSreport2020_Brazil.pdf

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