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ABS情報

bhutan_n_150 ブータン

掲載日:2022年5月13日

生物多様性条約 締約国(1995年11月23日~)
名古屋議定書 締約国(2014年10月12日~)
ITPGRFA 締約国(2004年6月29日~)

概要

・ABSへの対応が必要となるのは、遺伝資源と生化学的資源(派生物)
・野生種だけでなく飼育・栽培種(ex situ)も対象となる。
・ブータンは長期的な生物多様性の保全を達成するためには、まず遺伝資源が利用され利益が出なくてはならない
ことを認識している。
・基本的に外国との共同研究に対しては非常に積極的な態度を持つ。
・これまでに外国の研究機関・企業(日本、スイス、フランス、オランダなど)と13件の共同研究が行われ、11種の製品が
開発される実績を持つ(2021年11月現在)。
・配分された金銭的利益を生物保護や地域社会の支援などに実際に活用している。
(現在、他にここまで実践されている国はない。)
・伝統的医療に関する組織化が進んでおり、ブータン国内の伝統的知識がデータベース化されている。
・医療、美容、健康の分野で海外、特に日本の研究機関との共同研究が望まれている。
・ABSに関する最も重要な法令である生物多様性法(2003)に関しては、2021年に改正案が議会に提出されており、近々
改正される予定。

アクセス許可申請手続き

1) 学術研究のためのアクセス許可手続き
・手続きは基本的には1週間程度で終了する。
0. ブータン国内の研究機関との共同研究を開始する。(機関間の共同研究契約の締結を推奨する。)
・共同研究先がない場合、ブータン政府ABS窓口(National Focal Point: NFP)である国立生物多様性センター(National Biodiversity
Centre:NBC)に適切な研究機関の紹介を依頼することも可能。
1. NFPに、MTA締結申請書(Toolkit附属書4)を届け出る。
(*注:Toolkit附属書とは、関連法令3の「ブータン王国 遺伝資源および関連する伝統的知識の管理のためのABSツールキット
2018」の添付書類です。附属書3:アクセス提案書、附属書4:MTA申請書、 附属書5:MTA、附属書6:Scoping契約書、7:ABS契約書)
2. (遺伝資源に関する伝統的知識にアクセスする場合、) 伝統的知識の所有者から事前の情報に基づく同意(Prior Informed Consent:
PIC) を取得する必要がある。この際、NFPに所有者の特定や地域社会との交渉などの支援を依頼することが出来る。
3. ブータンの研究機関とご自身の研究機関の間で材料移転合意書(Material Transfer Agreement: MTA、Toolkit附属書5)の原案
を作成し、NFPに提出する。
4. NFPはMTAの内容を評価し、その結果をブータン政府のABS管轄機関(Competent National Authority: CNA)である農業森林省
(Ministry of Agriculture and Forestry: MoAF)に報告する。CNAはNFPと相談の上、承認・却下の判断を下す。
5. CNAの承認が得られた場合、NFPがMTAに署名を行う。これは、学術研究のためのアクセス許可のみならず、研究や輸出に関する
許可証としても効力を持つ。
6. (生物多様性法の改正法案が発行した場合)CNAの承認が出た段階でNFPは輸出のための試料移転証明書を発行するようになる予定。
7. ブータン、日本のABS以外の法令や規則(動植物検疫、輸出入管理など)に従って輸出・輸入を行う。

2) 商業研究のためのアクセス許可手続き
・契約交渉にはかなりの時間が必要となるため、許可申請には時間的な余裕を持っておくことが大切。
0. ブータン国内の研究機関との共同研究を開始する。(機関間の共同研究契約の締結を推奨する。)
・共同研究先がない場合、ブータン政府ABS窓口(National Focal Point: NFP)である国立生物多様性センター(National Biodiversity
Centre:NBC)に適切な研究機関の紹介を依頼することも可能。
1. 申請者が、ブータン政府ABS窓口(National Focal Point: NFP)である国立生物多様性センター(National Biodiversity Centre: NBC)に
対して、アクセス許可申請書(Toolkit附属書3)を提出する。
2. NFPはMTAの内容を評価し、その結果をブータン政府のABS管轄機関(Competent National Authority: CNA)である農業森林省
(Ministry of Agriculture and Forestry: MoAF)に報告する。CNAはNFPと相談の上、承認・却下の判断を下す。
3. CNAからのアクセス許可申請についての承認が得られた場合、遺伝資源や伝統的知識の所有者から事前の情報に基づく同意
(Prior Informed Consent: PIC)を取得する。この際、NFPに所有者の特定や地域社会との交渉などの支援を依頼することが出来る。
4. 商業研究の場合、探索段階(scoping phase)、実用化段階(actualization phase)のいずれかによって必要な契約の種類が異なる。
・探索段階とは、スクリーニングや基礎データの収集などの研究段階であり、実用化段階とは、遺伝資源の商品化(知財権の取得、
製品開発、臨床試験、市場への導入など)のための研究段階である。
・通常は、探索契約(scoping agreement, Toolkit附属書6)を締結して研究を開始し、商品化の目処が立ったら、
改めて実用化契約(ABS agreement, Toolkit附属書7)を締結して、商業研究を進める場合が多いが、最初から実用化段階のアクセス
許可申請を行うことも可能。
・探索契約は利用者・NFPの二者で、実用化契約は利用者・提供者・NFPの三者間で結ばれる。
・実用化契約には利益配分に関する取り決めが必要となり、提供者との交渉に時間がかかる場合がある(場合によっては1年ほど)。
NFPはこの交渉などの際も仲介を行う。
・探索契約と実用化契約の手続きには、35,000ニュルタム(約55,000円)の手数料が必要となる。さらに、探索契約を締結する際、
または直接、実用化契約を締結する場合には、この際に350,000ニュルタム(約552,000円)の保証金を支払う。(2022-03-22の現在の
レートに基づく通貨換算。)
5. CNAはNFPと相談の上、承認・却下の判断を下す。
6. CNAが契約条件を承認した場合、NFPがこれらの契約書に署名を行う。これらの契約書(探索契約・実用化契約)が、それぞれの
研究段階における、アクセス・研究・輸出の許可証として機能する。
7. (生物多様性法の改正法案が発行した場合、) NFPはABSクリアリングハウス(ABSCH)メカニズムを介して、国際的に認められた
コンプライアンス証明書(IRCC)の発行の手続きをすすめる。
8. ブータン、日本のABS以外の法令や規則(動植物検疫、輸出入管理など)に従って輸出・輸入を行う。

その他の情報

遺伝資源に関する伝統的知識について
・ブータンでは伝統的知識の収集・保存に力を入れており、伝統的知識のデータベースも整備されている。
・NBCが積極的に地域社会に入って伝統的知識の調査を進めており、非常に組織化されている。
・伝統的知識は農業森林省(MoAF)の管轄下にあるが、伝統的医療(sowa rigpa)に関しては保健省(Ministry of Health:MoH)の
伝統的医療局(Department of the Traditional Medicine Services)の管轄下にあり、該当する場合は、この部局からの許可を
取得する必要がある。
・伝統的知識の医療、美容、健康への応用のため、外国(特に日本)との共同研究に期待している。
・伝統的知識に関する許可取得は容易ではないが、同意書の取得の際はNFPがかなりの支援をしてくれる。
NFP (NBC)によるサポートについて
・NBCにが生化学の研究室があり、基礎的な研究は現地でも可能(遠心真空乾燥装置や液体クロマトグラフィー(HPLC)などの
設備がある)。
・研究室には、薬用植物などから1200を越える抽出物ライブラリが準備されており、これらについては基礎データの提供を
受けることも可能。
ABSサイクルの実践について
・ブータンでは生物の保全と地域社会の福祉のためにABS基金(Bhutan Access and Benefit Sharing (BABS) Fund)が設立
されている。
・すでに国際的な共同研究により様々な商品が開発され、利益配分が行われ、地域社会の支援や、生物の保全が実際に進め
られている。(このような例は他の国にはほとんどない。)

関連法令など

1. ブータン王国生物多様性法2003
THE BIODIVERSITY ACT OF BHUTAN (2003)
(英)https://www.nationalcouncil.bt/assets/uploads/docs/acts/2014/BiodiversityEng2003.pdf
(日)ABS学術対策チーム仮訳
[内容概略]ブータン王国における生物多様性条約・名古屋議定書・ABSに関する基準となる法律。特徴(注意点)は、ABS対応の対象には派生物も含まれること、野生種だけではなく飼育種、栽培種、ex situコレクションの生物も含まれること、学術研究と商業研究では別の手続きがあること(学術はかなり簡易)などが挙げられる。本法律は、2021年に改正案が議会に提出されており、近々改正される予定との情報がある。

2. ブータン王国ABS指針 2015
The ABS Policy of Bhutan 2015
(英)https://absch.cbd.int/api/v2013/documents/7B097DEC-4261-8A0A-6B12-2C3BF60E53EF/attachments/204171/ABS%20policy%20FinalBooklet.pdf
(日)環境省暫定訳
[内容概略]ブータン王国の法令・規則などの現状と目的が説明されており、今後のABSに関する計画案が記述されている。具体的な手続き方法が記述されている訳ではないが、規制などの目的や今後の方針などについてが明記されている。

3. ブータン王国 遺伝資源および関連する伝統的知識の管理のためのABSツールキット 2018
ABS Toolkit for management of genetic resources and associated traditional knowledge in Bhutan
http://www.nbc.gov.bt/wp-content/uploads/2010/06/ABS-Toolkit-final.pdf
[内容概略]ブータン王国におけるABSの実施に関する情報がまとめてあるガイドブック。内容は、ブータン王国におけるABSの概念と法体系、ABS対応手続きなどに加えて、実際の契約例や申請書式(アクセス申請、MTA、契約書例)などABSに関する手続きを進める上で有用な情報が掲載されている。ブータン王国の遺伝資源・伝統的知識の研究への利用を考える場合は必読。

連絡先

ABSについての国内中央連絡先 (National Focal Point: NFP)
https://absch.cbd.int/en/countries/BT

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