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ABS情報

 キューバ

最終更新日:2022年3月31日

生物多様性条約 締約国(1994年6月6日 加盟)
名古屋議定書 締約国(2015年12月16日 加盟)
食料農業植物遺伝資源条約 締約国(2004年12月15日 加盟)

概要

・外国人・外国機関によるキューバ遺伝資源の研究利用には、キューバの研究機関による手続きが必要となる。これはすなわち共同研究が必須であることを意味する。(相互の信頼関係が大変に重要となる。)
・遺伝資源だけではなく、派生物も対象となる。(法令に直接的な記述はないが、申請情報には派生物を対象とすることを示す記載がある。)
・現時点では配列情報などはABSの対象とはなっていない。(近々、ABSに関する重要な法令の一つ、「科学技術環境省決議第111/96号」が改定される予定であり、そこで含まれるようになる可能性がある。)
・ABSに関する政府許可は1. 自然環境へのアクセス許可、2. 野生からの採取許可、3. 研究利用許可、4. 輸出許可の4種類。
・ABSに関する許認可権限を持つ部局は科学技術環境省Ministerio de Ciencia, Tecnología y Medio Ambiente de Cuba (CITMA)、環境規制安全局(Oficina de Regulación y Seguridad Ambiental (ORSA))。
・研究VISAは15日以内に取得が可能だが、これにはキューバ側の研究機関からの招待状と、訪問先(採取場所)や渡航(研究)計画の提出が必要となる。
・市販品やペットショップ、インターネットで販売されている商品の研究利用の場合にも、キューバの許可取得を取るよう、キューバ政府のABS窓口から強く注意を受けた。
・ABSを担当する部局との直接の対話では、国際共同研究に対して積極的・協力的な印象を受けた。

許可取得手順

1) 日本人研究者が(キューバの共同研究者と一緒に)野外探索を行い、サンプルを自ら持ち帰る場合
1-1 日本人・キューバ人研究者が所属する研究機関同士で共同研究契約を締結する。
1-2 キューバの機関が、ABS管轄当局である科学技術環境省(CITMA)環境規制保安局(ORSA)に対して、当該共同研究に必要な許可証(1. 自然環境へのアクセス許可、2. 野外からの採取許可、3. 研究利用許可)を申請する。
・自然環境へのアクセス許可は、キューバの自然(野外)で採取を行う場合は当然必要となるが、採取を行わない単なる自然観察の場合にも必要となる。
・これらの許可証の申請書には、研究の目的、対象となる遺伝資源、期待された利益とその配分などの記述が必須となる。(記載内容については、書類1(特定情報)原文和訳を参照のこと)
1-3 研究機関間で材料移転合意書(MTA: Material Transfer Agreement)を交わす。
1-4 キューバの機関が当局(ORSA/CITMA)に対して輸出許可申請を行う。
・この際、輸出許可申請書、MTA、書類2(PIC/MAT書式)原文和訳、の3つの書類を提出すること。
・当局がPIC/MAT書式に裏書きを行うことで、輸出許可証の手続きが進む。
1-5 遺伝資源の輸出入を行う。
・この際ABS以外の法令・ルール(輸出入、検疫など)にも留意すること。特に動植物検疫書類に不備があると、日本の検疫所で没収されサンプルの廃棄処分の可能性もあり得る。
1-6 両科学機関は、遺伝資源へのアクセスや利用、また利益配分が法律やMATに則って行うこと。またキューバ当局がこの件について検証を行う際は協力すること。

2) キューバの科学機関が所蔵するサンプルを輸送してもらう場合、留学生がサンプルを日本に持ち込む場合
・「1) 日本人研究者が野外探索を行い、サンプルを自ら持ち帰る場合」とほぼ同じ手続きを進める。
・相違点は手順1)の1-2で紹介した4つ許可のうち、1. 自然環境へのアクセス許可、2. 野外からの採取許可が不要になる点のみ(3. 研究利用許可、4. 輸出許可の取得で十分)。

注意点:
・食料農業植物遺伝資源条約(ITPGR-FA: International Treaty on Plant Genetic Resources for Food and Agriculture)の枠組みでのサンプル移転の場合は、生物多様性条約・名古屋議定書・ABSの対象外。
・許可証の申請はサンプルや目的に依らず、全て科学技術環境省 環境規制保安局(ORSA/CITMA)に行う。
その他の省庁・部局からの許可が必要な場合は、ORSAが許可権限を持つ省庁について案内する(例:農業作物は農業省からの許可、病原性微生物は保健省からの許可が必要、など)。
・許可証の有効期限は、研究利用許可(1回使い切り)、採取許可(1回使い切り)、輸出許可(1年間有効)。
・第三者配布を行いたい場合は、共同研究契約書のMATにその記述を加えておくこと。
これがある場合は、分譲を受ける第三者はキューバからの許可取得は不要(ただし、契約書のMATの条件を守ること)。
・契約書に第三者配布についての記述がなくても、分譲を受けることは可能だが、この場合は、キューバからアクセス許可を取得する必要がある。

 

許可申請書(書類1) 原文 和訳

PIC/MAT書式(書類2) 原文 和訳

 

関連法令など

*各関連法規の和訳は、あくまで「暫定訳」「仮訳」です。ご参考程度にご利用ください。
1. 科学技術環境省決議第111/96号 生物多様性規則(1996年) MINISTERIO DE CIENCIA, TECNOLOGIA Y MEDIO AMBIENTE RESOLUCION No. 111/96
原文 ABS学術対策チーム仮訳
[内容概略]生物多様性条約に対応する国内規則であり、生物多様性の保全、その構成要素の持続可能な利用、および遺伝資源の使用から生じる公正かつ公平な利益の配分に必要な行動および措置が記述されている。外国人・外国研究機関によるキューバ遺伝資源の利用には、キューバの研究機関との共同研究を行った上で、科学技術環境省の環境規制安全局からの許可証が必要であることが示されている(11条)。また研究機関間で結ばれる共同研究契約書の相互合意条項(MAT)に対し、当局からの承認が必要であることが記されている(12条)。この法令はキューバにおけるABSに関する対応についての最も重要な法令であるが、近い将来、改定される予定になっている。

2. 環境法第81号(1997年) Ley de protección al medio ambiente y del uso racional de los recursos naturales
https://www.parlamentocubano.gob.cu/index.php/documento/ley-de-proteccion-al-medio-ambiente-y-del-uso-racional-de-los-recursos-naturales/
[内容概略]天然資源、環境の持続可能な開発、そして生物多様性、絶滅危惧種などの保全についての基準となる法律。この中で科学技術環境省に、農業省およびその他の管轄機関および団体と協力して、生物の輸出を制限、禁止する規則を策定する法的権限を与えることが示された(87条)。

3. 共和国憲法(2019年) CONSTITUCIÓN DE LA REPÚBLICA
https://www.gacetaoficial.gob.cu/es/constitucion-de-la-republica-de-cuba-proclamada-el-10-de-abril-de-2019
[内容概略]憲法で国の環境と天然資源に対し、主権を行使すること、自然、歴史、文化の保護を明記している(第11条)。環境や動植物の保護や、持続可能な開発についても記述がある。

4. 森林法第85号(1998年) Ley Forestal
https://www.parlamentocubano.gob.cu/index.php/documento/ley-forestal/
[内容概略]森林資源の遺伝的多様性を保全する保護地域の決定について記述されている。農業省は、科学技術環境省と連携して、キューバの森林遺伝資源に含まれる遺伝子や個体の繁殖、管理、保存の規制を担当する。保護地域は、科学技術環境省の協力の元、森林研究所が提案を行い、森林局が承認・正式決定を行う。

5. 法令第388号(2019年) 食糧・農業および種子のための植物資源に関する法令 DECRETO-LEY NO. 388 DE RECURSOS FITOGENÉTICOS PARA LA ALIMENTACIÓN, LA AGRICULTURA Y LAS SEMILLAS
https://www.gacetaoficial.gob.cu/sites/default/files/goc-2020-o57.pdf
[内容概略]本法令の内容は、農業食料植物遺伝資源条約(ITPGR-FA)に対応する国内法令である。この法令ので、農業省が食糧・農業のための植物資源に関する主導的な組織であること、農業省は他の当局と協力して、植物資源の調査、保全、アクセス、使用などの活動を組織ことが定められている。また、この法令では植物資源の使用に関する伝統的知識の重要性が明記されている。

連絡先

ABSについての国内の中央連絡先(National Focal Point: NFP)
https://absch.cbd.int/en/countries/CU

 

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