最終更新日:2021年10月21日
名古屋議定書 締約国(2015年9月29日)
生物多様性条約 締約国(1994年1月6日)
農業食料植物遺伝資源条約 締約国(2006年12月27日)
・規制の対象は「生物資源」であり、フィリピンの全ての生物(野生種、栽培・飼育種、外来種、大学・研究
機関のコレクションなどを含む)とその派生物、副産物(生物工学的に合成された産物)を含む概念。
・外国の研究機関や個人による遺伝資源の取得・利用にはフィリピン政府からの許可が必要であり、許可取得の
条件として、フィリピンの研究機関との共同研究であることが必須となる。
(共同研究なしのサンプルの取得・移転は許可されない。)
・生物資源に関する許可権限を持つ省庁は、環境天然資源省または農務省(サンプルによって、管轄する省庁が
異なる)。なお、パラワン州については、パラワン州持続可能開発評議会が管轄権を持つ。
・学術研究の場合は、共同研究機関との合意書と、政府の担当部局からの無償許可証の取得が必要となる。
・商業研究の場合は、サンプル提供者からの事前の情報に基づく同意の取得、担当部局と生物探査協定を締結
(=許可証に相当)、保証金の支払いが必要となる。
・先住民の居住地域に由来する遺伝資源の研究を行う場合には、地域住民社会から自由意思による事前の情報に
基づく同意を得なければならない。
・絶滅が危惧される、またはその危険にある生物については管轄省庁大臣からの許可が必要となる。
・フィリピンの生物資源の研究成果の商業利用から金銭的利益が生じた場合、総売上高の2%を中央政府と提供
者に支払う。
・商業利用の場合は、他に利用料、前払い金などが支払われる必要がある。
[学術研究の場合]
1)フィリピン研究機関との共同研究契約の締結と事前承諾書の取得
・外国人・外国研究機関が、研究のための目的でフィリピンの生物にアクセスする場合は、日本とフィリピン
の研究機関の間で共同研究契約(*1)を結び、その中にABSに関する相互合意条項(*2)を明記する必要がある。
・また、フィリピンの研究機関の長から事前承諾書(*3)を取得する必要がある。
(事前承諾書は共同研究契約とは別書類として作成すること。)
2) フィリピンの管轄省庁との覚書(MoA)の締結
・サンプルを管轄する省庁との間で覚書(MoA: Memorandum of Agreement)(*4)を締結する。
(注意:ここで言うMoAは研究機関間で結ぶ共同研究契約とは別の書類であり、管轄省庁と申請者が所属する
研究機関との間でMoAを結ぶ必要がある。)
3) フィリピンの管轄省庁からの無償研究許可証(GP)の取得
・許可権限を持つのは環境天然資源省(DENR)大臣、農業省(DA)大臣、またはパラワン持続可能開発委員会
(PCSD)(*5)。サンプルの種類、取得場所によって管轄が異なる。
・サンプルを管轄する省庁に無償研究許可証(GP: Gratuitous Permit)の申請を行う。
4) 地方輸送許可(LTP: Local Transfer Permit)の取得
・野生生物、副産物、派生物のフィリピンの国内移転にはDENRの生物多様性管理局(BMB:Biodiversity
Management Bureau)からのLTPの取得が必要となる。
5) 輸出許可証の取得
・日本にサンプルを持ち出す場合は、それぞれの生物を管轄する省庁(*5)のいずれか(DENR、DA、または
PCSD)に輸出許可(EP: Export Permit)を申請する。
6) 日本への輸入
・輸入に際しては、ABS以外の法令(CITES、輸出入、検疫など)にも留意して、輸入手続きを進める。
・検疫手続き(提供国からの動植物検疫証明書の提出など)に不備があった場合、サンプルは没収・廃棄処分と
なる可能性もある。
[商業研究の場合]
1) フィリピン研究機関との共同研究契約の締結
・商業利用の場合も学術と同様に、日本とフィリピンの研究機関の間で共同研究契約(*1)を結び、その中に
ABSに関する相互合意条項(*2)を明記する必要がある。
2) フィリピンの管轄省庁からの生物探査協定(BU: Bioprospecting Undertaking)の取得
・管轄省庁に対して、生物探査協定(BU)の申請を行う。BUについて許可権限を持つのは、環境天然資源省大臣
(DENR)、農業省大臣(DA)、またはパラワン持続可能開発委員会(PCSD)。サンプルの種類、取得場所によって
管轄が異なる(*5)。
3) FPIC/PICの取得
・先住民族の居住地域で研究を行う場合には、自由意志による事前情報に基づく合意(Free and Prior Informed
Consent:FPIC)が必要であり、地方自治体、保護地域、私有地のサンプルについては採取場所の管理者から
事前情報に基づく合意(Prior Informed Consent: PIC)を取得する。
4) 日本への輸入
・輸入に際しては、ABS以外の法令にも留意して、輸入手続きを進める。(検疫手続き(提供国からの動植物
検疫証明書の提出など)に不備があった場合、サンプルは廃棄処分を受ける。)
*1:共同研究契約には、包括的な契約であるMoU (Memorandum of Understanding)、MoA (Memorandum of
Agreement)などから、個別研究向けのCRA (Collaborative Research Agreement)、PA (Project
Agreement)など複数の種類があリますが、提供国政府や共同研究機関で要求される形式の中から、それぞれ
の研究に相応しい形式の契約を選択して下さい。
*2:相互合意条項(MAT: Mutually Agreed Terms)には、取得条件(量、地域、期間、手段など)、移転条件
(第三者移転の可否、提供者の同意が必要かなど)、利用条件(転用の可否、商用利用の場合の再契約、利用終了
後の処分法など)、利益配分(共著、金銭的利益の配分、実験・研究技術の移転など)、役割分担(研究における
役割、提供国の担当省庁に対する手続きなど)、報告義務(年次報告、結果報告など)、その他(研究室間での
成果データの共有方法、データベースへの登録など)が含まれます。両者で話し合って適切な項目を選択して
記述して下さい。
*3:法令での英語表現は、prior clearance from concerned bodies (関係機関からの事前承諾書)、
またはletter of consent of local institution (フィリピン研究機関の同意書)
*4:管轄省庁とのMoAに含まれるべき4条件:
1. 研究、論文などからのスピンオフ技術の開発(研究で開発された技術の民生転用(商業化))は不可であること。
2. 関係機関の事前の承認なしに知的財産権を申請してはならないこと。
3. 提案者は研究終了時に関係機関に成果を提出し、必要な場合に推奨活動計画を提出すること。
4. 該当する場合は、動物福祉プロトコルを遵守すること。
*5:陸上生物は環境天然資源省(DENR: Department of Environment and Natural Resources)、水棲生物
(*注)は農業省(DA:Department of Agriculture)、パラワン州の生物はパラワン持続可能開発委員会
(PCSD: Palawan Council for Sustainable Development)、伝統的知識については国家先住民問題委員会
(NCIP: National Commission on Indigenous Peoples)が管轄する。
(*注:水棲生物であっても、カメ、ワニ、水鳥、両生類、ジュゴンなどはDAが管轄する。)
これらの部署とは、本ページ末の「連絡先」にあるURL先にあるアドレスからコンタクトできます。
① 大統領令第247号(1995年) 科学的、商業的、その他の目的のために、生物・遺伝資源やその副産物および派生物
の研究に関するガイドラインと規制の枠組み
Executive Order No. 247 (1995) Prescribing Guidelines and Establishing a Regulatory Framework
for the Prospecting of Biological and Genetic Resources, Their By-Products and Derivatives, for
Scientific and Commercial Purposes; and for Other Purposes
【原文(英語)】https://www.officialgazette.gov.ph/1995/05/18/executive-order-no-247-s-1995/
② 共和国法律第9147号(2001年) 野生生物資源とその生息地の保全及び当該保全保護等のための予算割当について
定める法律 (①の見直しにより制定された法律)
Republic Act No. 9147 An Act Providing For The Conservation And Protection Of Wildlife Resources
And Their Habitats, Appropriating Funds Therefore And For Other Purposes
【原文(英語)】https://www.officialgazette.gov.ph/2001/07/30/republic-act-no-9417/
③ DENR-DA-PCSD共同行政命令第01号(2004年) 共和国法第9147号「野生生物資源とその生息地の保全及び当該保全
保護等のための予算割当について定める法律」に基づく共同実施規則および規則(IRR) ( 2)の施行規則 )
Joint DENR-DA-PCSD Administrative Order No. 01 (2004)- Joint Implementing Rules And Regulations
(IRR) Pursuant To Republic Act No. 9147: “An Act Providing For The Conservation And Protection Of
Wildlife Resources And Their Habitats, Appropriating Funds Therefore And For Other Purposes”
【原文(英語)】https://bmb.gov.ph/index.php/e-library/laws-and-policies/denr-administrative-orders/dao-1997-2006?download=300:joint-denr-da-pcsd-administrative-order-2004-01&start=20
④ DENR-DA-PCSD-NCIP共同行政命令第01号(2005年)-フィリピン国内の生物探査活動に関するガイドライン
(②の施行規則)
Joint DENR-DA-PCSD-NCIP Administrative Order No.1 (2005)- Guidelines for Bioprospecting Activities
in the Philippines
【原文(英語)】https://bmb.gov.ph/index.php/e-library/laws-and-policies/denr-administrative-orders/dao-1997-2006?download=164:joint-da-pcsd-ncip-administrative-order-2005-01&start=20
【日本語訳】http://abs.env.go.jp/foreign_institutions4/down.php?id=Philippines_bioprospecting_GL_2005.pdf
⑤ 法律第8371号-先住民権利法(1997年)
Republic Act No. 8371: The Indigenous Peoples’ Rights Act of 1997
【原文(英語)】https://www.officialgazette.gov.ph/1997/10/29/republic-act-no-8371/
⑥ NCIP行政命令第1号(1998) 共和国法第8371号(先住民の権利法)を実施するための規則および規制(⑤の施行規則)
National Commission on Indigenous Peoples Administrative Order No. 1 (1998)- Rules and Regulations
Implementing Republic Act No. 8371 -Indigenous Peoples‘ Rights Act of 1997 (IPRA)
【原文(英語)】http://ncipcar.ph/images/pdfs/IRR-of-IPRA.pdf
⑦ DENR行政命令第55号-2004年共同行政命令に従ったDENR合理化・手続きガイドライン(2005年)
DENR Administrative Order No. 55 (2004)- DENR streamlining/procedural guidelines pursuant to the
joint denr da pcsd implementing rules and regulations of republic act no. 9147 otherwise known as
”wildlife resources conservation and protection act”
【原文(英語)】https://bmb.gov.ph/index.php/e-library/laws-and-policies/denr-administrative-orders/dao-1997-2006?download=154:denr-administrative-order-2004-55&start=20
⑧ DENR管理命令第15号-陸生絶滅危機種とそのカテゴリーの使用、および2001年の「野生生物資源保全保護法」
として知られている共和国法第9147号に基づく他の野生生物種のリストの確立(2004年)
DENR Administrative Order No. 15 (2004)- Establishing the ust of terrestrial threatened species
and their categories, and the list of other wildlife species pursuant to republic act no. 9147,
otherwise known as the wildlife resources conltiervation and protection act of 2001
【原文(英語)】http://www.philchm.ph/wp-content/uploads/2019/02/List-of-Threathened-Wildlife-Species-DAO2004-15.pdf
ABSについての国内の中央連絡先(National Focal Point: NFP)および
権限ある国内当局(Competent National Authority: CNA)
https://absch.cbd.int/countries/PH
※ その他の連絡先についてはCBDサイトを参照
http://www.cbd.int/countries/nfp/?country=ph
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環境天然資源省(Department of Environment and Natural Resources: DENR)
https://denr.gov.ph
生物多様性管理局(Biodiversity Management Bureau: BMB)
http://bmb.gov.ph/
農業省(Department of Agriculture: DA)
https://www.da.gov.ph/
漁業水産資源局(Bureau of Fisheries and Aquatic Resources: BFAR)
https://www.bfar.da.gov.ph
パラワン州持続可能開発委員会(Palawan Council for Sustainable Development: PCSD)
https://pcsd.gov.ph/
国家先住民問題委員会(National Commission on Indigenous Peoples: NCIP)
http://ncip.gov.ph/