掲載日:2022年5月13日
生物多様性条約 締約国(1994年2月21日~)
名古屋議定書 締約国(2019年3月28日~)
食料農業植物遺伝資源条約 締約国(2010年1月17日~)
・遺伝資源、および遺伝資源に関連する伝統的な知識の取得・利用に関わる法令はまだ整備されていない。
(長期間に渡って様々な法律案が提出され議論が続いているが未だ成立には至っていない。)
・遺伝資源、伝統的知識の管理は3つのレベル(国家レベル遺伝資源管理評議会、州レベル遺伝資源管理評議会、地域社会レベル遺伝資源管理委員会)が行なっている。
・正式な手続きは確定していないが、一応の手順は存在している。
・ネパールは国際共同研究を積極的に進めたいと考えている(特に日本は歓迎する、とのこと)。
注意:まだ法令・手続きなど、定まっていない部分が多いため、不明な点があれば、ネパールの共同研究者を介して
ABS窓口(NFP: National Focal Point)に問い合わせを行い、手続きを進められることを推奨いたします。
1. 日本人・ネパール人研究者が所属する研究機関同士で共同研究契約を締結する。
この際、サンプルの利用に関する相互合意条項(Mutually Agreed Terms: MAT)を契約書に明記すること。
2. 遺伝資源の所有者と交渉し採取に関する同意を取得する。遺伝資源の所有者は、私有地の場合は土地所有者、地域社会の土地の
場合は地域社会、その他の場合はネパール政府となる。(所有者が個人、地域社会の場合は、遺伝資源管理評議会が交渉をサポート
してくれるとのこと。)
・なお、植物遺伝資源に関して、日本とネパールの大学が共同研究を行う場合、ネパールの大学から環境森林省植物資源局(Department of Plant Resources, Ministry of Forests and Environment)への相談が推奨される。https://dpr.gov.np/en/
3. ネパールの共同研究機関と協力して国レベル遺伝資源管理評議会に対して、アクセス許可、輸出許可など自らの研究に必要な許可証の申請を行う。
4. 研究機関間で材料移転合意書(MTA: Material Transfer Agreement)を交わす。
5. 遺伝資源の移転(ネパールからの輸出、日本への輸入)を行う。
・この際、ABS以外の法令・ルール(輸出入、検疫など)にも留意すること。特に動植物検疫書類に不備があると、日本の検疫所で没収されサンプルの廃棄処分の可能性もあり得る。
・ネパールからの植物検疫証明はネパール国家統一窓口(Nepal National Single Window: NNSW)(https://nnsw.gov.np/trade)からオンライン申請可能。(NNSWの利用法についてはYouTubeにビデオチュートリアルがある:https://www.youtube.com/channel/UCKl2rG3Kb3VMYFsB6sbqWzg)
6. 両科学機関は遺伝資源へのアクセスや利用、また利益配分に関して、両国の法令やMATに則って行う。
注意など:
・植物に関する伝統的知識についてはデータベースが準備されている。(http://plants.bakaida.com/)
・食料農業植物遺伝資源条約(ITPGR-FA: International Treaty on Plant Genetic Resources for Food and Agriculture)の枠組みでのサンプル移転の場合は、生物多様性条約・名古屋議定書・ABSの対象外。ITPGR-FAに関する問い合わせは、FAO Representation in Nepal (email: FAO-NP@fao.org, Tel: +977-1-5523200, Fax: +977-1-5526358)まで。
・海外のコレクションであっても、ネパールに由来する遺伝資源を利用する場合は、ネパール政府当局に連絡する必要があるとの説明を受けている。
(法的根拠は明確ではないが、リスク管理のためには、ネパール側の主張として知っておくことは必要だと思われる。)
・共同研究を始める・進める上で、また手続きなどに不安があれば現地に赴くのが最良である。
ABS戦略と行動計画案(ABS実施計画) Preparation of ABS Strategy and Action Plan (ABS Implementation Plan)
https://hrms.iucn.org/iresy/index.cfm?event=vac.offline.download&offline_vacancy_id=2586
[内容概略]ネパールの法令・規則などのABSに関する全体枠組みを作成する計画案が記述されている。規則や手続きが記述されている訳ではないので、直接的に手続きの理解にはつながらないが、今後のネパールの法整備の方向性、関心の理解などには有効な情報となるだろう。
ABSについての国内の中央連絡先 (National Focal Point: NFP)
https://absch.cbd.int/en/countries/NP