研究機関研究の金銭的利益配分とはなにか?
提供国の遺伝資源利用に関心があるのは、利益配分に期待しているからである。
したがって、提供国の研究者はともかく関係者の多くは利益配分、特に金銭的利益配分を強く求める。このような事情を理解しないで、非営利研究で利益はないと強調すると、関係者の中には関心を失うものがでてくる。そうすると、アクセスに必要な手続きが滞ることになりかねない。そのため、慎重な対応が求められる。
提供国の中には、国内法令によって利益配分を決めている国がある。その場合、利益として金銭的利益が条項として定めている。このような国では、金銭的利益配分を避けて通ることは困難である。
分類学的研究のように全く金銭的利益が予想されない研究は、提供国の理解を得るのは比較的容易と思われるが、そうでない限り、交渉相手と少なくとも金銭的利益について議論することが必要と考える。その際、利用研究の実態、金銭的利益を得るまでの過程等の詳細な説明を行い、計画する研究の位置づけを理解してもらう工夫が必要である。あくまで計画する研究の規模と成果の予想、金銭的利益の可能性を十分解析したうえで判断することが必要である。
欧米諸国、あるいは米国の行っている遺伝資源利用研究の金銭的利益配分のやり方を参考にすることができる。提供国では、日本も米国も関係なく単なる利用相手と考える。同様な研究計画を日米から提案された場合、しっかりした金銭的利益配分を明記する米国提案を提供国が取ることは明白である。いかに提供国の研究者が日本に肩入れしたとしても、政府関係者はやはり金銭的利益のある方を選ぶ可能性は高いと考えられる。