現在ある提供国との共同研究を修正し、新たな特定第三者との共同研究のための素材移転を認めてもらう条項を加えたい。
この場合、契約形態はどのようにするのか?
1.提供国研究機関との現存共同研究契約を一部修正し、不特定第三者との共同研究を行うことに同意するとする
2.提供国研究機関との共同研究契約を一部修正し、特定第三者のみとの共同研究を行うことに同意するとする
3.提供国研究機関、研究機関―特定共同研究機関の三者契約を新たに結ぶ
提供国研究機関との現存共同研究契約の中で第三者移転についてどのように決められているかにより、今後の三者間に契約が異なる。通常提供国は遺伝資源の第三者移転を認めない場合が多いが、認める場合でも契約の中で条件を付けている。条件とは、第三者移転には改めて許可と契約が必要とするものが多い。今回の場合は、第三者との共同研究に用いる素材は遺伝資源そのものではなく、研究から生じた派生物とした場合でも、契約で派生物が共有になっていれば、同様に再度の許可と契約が必要となる。
以上の背景を考慮すると、提供国との共同研究の結果生じた成果物を更に別の第三者と共同研究する場合、「現存共同研究契約を一部修正し、第三者との共同研究を行うことに同意するとする」という形式は困難と考えられる。提供国の所有権のある成果物を勝手に移転することは認めないと思われる。もし契約で合意したとしても、許可段階で不衡平であるとして問題視される。
したがって、第三者との共同研究のために第三者移転する条項は、第二番目の「特定第三者との共同研究のためにのみに成果物を移転する」ことに合意することをめざすのが妥当である。注意しなければならないのは、ここでいう特定第三者との共同研究とは非商用研究に限定される。もし、商用研究で企業等に成果物を移転する場合、改めて提供国政府及び機関とのPIC/MAT再取得が必要である。更に、特定第三者との共同研究内容を詳しく提供国研究機関に報告することが必須である。修正共同研究契約に添付した契約でもよいし、覚書としてもよい。提供国共同研究機関あるいは特定第三者の意向によるが、一般的に三者契約にする必要はないと考える。もし、特定第三者と共同研究を行うことが予定されていなければ、単なるMTAでよいと考える。ただし、重要な点は、特定第三者が提供国研究機関と締結した修正共同研究契約を遵守するという契約が必要である点である。したがって、通常のMTAなどと異なり、特定第三者の成果の発表、発明等の帰属、特定第三者からの更なる第三者への移転は制限されることになる可能性が高い。また、特定第三者の研究結果は、逐一提供国研究機関へ報告しなければならない。