アフリカから30年前に輸入されたが現在は日本にて繁殖されており、観賞用として購入できる熱帯魚を研究利用したい。日本輸入の経過は当時を知る人がなく文書も残っていない。この熱帯魚を商用の可能性のある研究用に使いたいが、PICやMATの取得かが必要かどうかどうして確認するか。
まず研究対象の熱帯魚ですが、アフリカから日本に初めて移動したのは30年前ということてで、生物多様性条約は存在しないため、当然PIC制度はない。しかし念のため30年以上前に日本に移動したという証拠書類、資料などのコピーを取っておくとよいと考える。この30年前が確定すると、PICは必要ないと考えられる。しかし、30年前入手であっても利用する時期が現在であれば、PICが必要であるという国もあるので、PICが完全に必要でないということを言い切れない。したがって入手経緯(入手国、熱帯魚の利用目的等)を記載した書類を確保するのが最も重要と思われる。次にMATに関する問題ですが、利用する研究目的により金銭的利益を生む可能性があるなら、MATを作っておく必要があると考える。おそらく最初に日本に輸入されたのは観賞目的が一番考えやすいので、研究目的に利用する場合は目的の変更になり、理論的にはMATが必要と考える。しかし、30年経った現在改めてMATを結ぶことは現実的に不可能と思う。
結論をいうと、アフリカから改めて同じ種類の熱帯魚をPIC/MATを入手して輸入するか、欧米の博物館、水族館から入手することを推奨する。日本に現在市販されているものを使うのが簡単ですが、金銭的利益を生む可能性がある場合、起源が明確なものを選ぶほうがよいと考えるからである。まず研究に利用したいのはどのような性質を持った熱帯魚であるか特定し、その条件に合ったものをどのようにして入手するかが、次の課題である。当然PICが取りやすい方法を選ぶことが先決である。おそらく、業者や個人などはPICなど持っていないので、そのような方から入手するとご自身がPICを取ることになる。なるべくそれを避けたいので、公的機関で保存しているところはないか探されるのが早いと思う。業者より買うよりは正統であることの保証はしてくれる。PICをとる場合でも協力してくれる可能性がある。PIC取得は考えうる努力と誠意をもって行うことが必要である。更にその努力を払ったという証拠書類が必要です。ご自身の判断が世間的に認められるかどうかはいずれ評価されると思う。努力の結果、どうしてもPICを取ることができなかった場合、PICを取れない理由を書いた書類を作ることが必要になる。
ご自身が改めて熱帯魚を利用した研究を行うので、どんな場合であれ素材移転契約(MATの一種)は必要になる。それを誰からもらうかは次の検討課題である。次に、商用利用の可能性があるので、契約書には利益配分条項を多くすることが必要であると考える。そうでないと、交渉相手も納得しない場合がある。しかし、利益配分はあくまで衡平でなくてはならない。誠意を持った交渉が必要である。