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よくある質問とその回答

よくある質問とその回答

 

はじめに

遺伝資源利用に関するアクセスと利益配分は複雑であり、未確定の要素も多い。生物多様性条約は概念的であり、その解釈には利害関係のため相反することも多い。さらに各国がそれぞれ固有の事情を織り込んだ国内法を定めているため、その規則、方法もそれぞれの国で異なる。したがって、個々の遺伝資源利用案件に応でた対応を利用実施者に求めている。
しかし、学術研究を実施している当事者は深い専門的知識もなく、法的な訓練を受けているわけではないので、解釈が分かれることについて自身で答えを見出すことは困難である。また、研究は未知の領域を切り開くことなので、過去の事実の上に組み立てられた理論では判断できないことも多い。そこで、当事者が自身で判断しやすいように、過去に寄せられた疑問とそれに対する回答集を作ることにした。遺伝資源利用研究を行う際によく遭遇する疑問をまとめ、共通する部分について回答を試みた。類似する疑問と回答から、自身の疑問の回答を考察するために有用であると考えられるからである。ただし、ここでの回答は、秘密保持の関係で一般化しているため、個々のケースで内容が変化することは十分あり得ることである。したがって、ここに示す回答はあくまで、参考であり個々のケースに適応させることが肝要であると考えられる。

遺伝資源利用研究のための
遺伝資源アクセスと利益配分に関する質問と回答
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遺伝資源
遺伝資源とは何か?
派生物とは何か?
感染性微生物も生物多様性条約の範囲に入るか?
海洋生物の取り扱い、特に公海及び深海底にある海洋遺伝資源。
1993年以前から市販され、製品化されている生物由来毒素を研究で利用する場合の対応。
遺伝資源はいきたものだけが範囲に入るのがすでに死んで死骸となったものも含まれるのがそうだとすると考古学者や人類学者の研究にも影響する。
生物の同定や、外部形態の多様性を調べるために、国外の標本館や博物館から「標本」を借用することは、アクセスと利益配分の対象になるか?
インターネット上で、「ある食品にある病気治療効果がある」という情報があり、ある食品から薬効成分を特定した。この場合、特許出願や事業化が可能がある食品は(1)日本国内にもある場合(2)日本国外にしかない場合に分けて説明してほしい。
ABSに関する手続き
海外から来る留学生や研究生の持ち込む遺伝資源は手続が必要か?
仲介業者から入手したサンプルは大丈夫か?
生物種の同定やゲノム解析などの受託サービスも商業利用とみなされるのか?
海外の市場で販売されている遺伝資源を利用する場合、手続は必要か?
中国で売られている薬草を購入し、そこから有効成分を抽出同定する研究もPICとMATが必要が既に研究は進行してしまっているが、現時点で行うべき対応は何か?
アフリカから30年前に輸入されたが現在は日本にて繁殖されており、観賞用として購入できる熱帯魚を研究利用したい。日本輸入の経過は当時を知る人がなく文書も残っていない。この熱帯魚を商用の可能性のある研究用に使いたいが、PICやMATの取得が必要かどうかどうして確認するか。
イギリス種子会社から野生種に近い植物の種を購入し、色素系の生合成研究を行っている。生物多様性条約上の問題はないか?
育種を目的とした作物近縁種の種子の入手を計画している。入手先は、アメリカ農務省(USDA)で、目的の種子はアメリカ原産のものだけでなく、ペルーやメキシコ等多数の原産国の種子が含まれている。
名古屋議定書は発効したが、それ以前の行為について適用されないと理解してよいか?
研究機関の研究者が、提供国から遺伝資源を入手する場合で
1.提供国が名古屋議定書に批准している場合、名古屋議定書に拘束される
2.提供国が名古屋議定書に批准していないが生物多様性条約に批准している場
合、名古屋議定書に拘束される
3.提供国が生物多様性条約に批准していない場合、名古屋議定書に拘束されない
という理解は正しいか?
提供国内研究者の生物多様性、国内法令や手続の認知はどれくらいがPIC取得手続きを知っている研究機関はどれくらいあるか?
遺伝資源へのアクセス承認(PIC)手続きと、相互に合意する条件での契約(MAT)について手順、かかる期間、承認可否の割合の実績等の情報、MATはPIC申請時に必ず揃えなければならないがMATは所定の様式があるがMATは第三者に閲覧される可能性があるか?
本来ならば、MATとPICがそろって初めて遺伝資源を利用できる、研究がスタートできるという認識でよいか。インドネシアでの共同研究では、MAT締結を締結しているので、すぐ遺伝資源を利用した研究開始したいが、リスクあるが 締結したMATには特許出願に関する契約を行っており、特許共同出願して、特許は既に公開されている。インドネシアのPICがないのは問題か?
PICの申請というのは、原産国(資源国)に対して個人的に行うものなのでしょうか?
生物多様性条約の要件に不満足、不確実な遺伝資源の取り扱いはどうすればよいか
相手国のPICおよびMATがなく無断で持ち込んだ研究用遺伝資源に対して、どのように遵守不履行の調査が行われ、どのような処分が行われるのか?
条約発効以前に入手したサンプルの新たな利用はどうなるのか?
生物多様性条約発効までに取得したもので、その利用が条約後に行い成果が条約後にでたものについて、名古屋議定書に縛られないと考えてよいのか?
生物多様性条約発効以前に入手した遺伝資源を育種に使いたい。起源国は入手した保存国とは異なる。保存国の機関では厳しい第三者移転禁止条項がある。
起源国から許可を取るべきか、保存機関から許可を取るべきか?
国内にある遺伝資源を海外の第三者に移転する場合の手続きは?
日本国内起源の遺伝資源で日本人の所有者がいない場合、米国研究機関への移転は民事契約で貸与・譲渡可能がカナダの研究機関への移転はカナダのABS国内法に従うのか?
日本近海で採取し保存している海洋遺伝資源を海外に移転する際どのような手続きが必要がこの遺伝資源は希少生物ではなく一般的に日本近海で採取できる。保存試料は漁師の網にかかったものをもらったので、特に契約等はない。
食用植物遺伝資源の野生種を日本国内で採取した。海外から育種用に使いたいので移転してほしいという希望があるが、手続はどうするのか?
米国の研究機関の生物多様性条約関連特に ABS についてどのように行っているが米国には ABS ガイドラインや行動規範などあるのか?
伝承的な遺伝資源あるいは伝統的活用方法などの移動には輸入における名古屋議定書対応はどうするのか?
ベトナムにおける伝統的知識問題を生物だけのルールだけで済ますのは問題を残す。
直接雇用関係にないが実際に研究機関で研究活動をしている者が海外遺伝資源を違法に取得した場合の機関の対応
契約
生物多様性条約締約国が起源の遺伝資源を、起源国の手続きなしに日本に移動し、日本人が保有している。起源国の法令が整っていない場合、日本の法令で日本人の所有物(特許など)とできるか?
現在ある提供国との共同研究を修正し、新たな特定第三者との共同研究のための素材移転を認めてもらう条項を加えたい。
この場合、契約形態はどのようにするのか?
1.提供国研究機関との現存共同研究契約を一部修正し、不特定第三者との共同研究を行うことに同意するとする
2.提供国研究機関との共同研究契約を一部修正し、特定第三者のみとの共同研究を行うことに同意するとする
3.提供国研究機関、研究機関―特定共同研究機関の三者契約を新たに結ぶ
遺伝子導入作物の種子、在来品種の種子などを研究目的で移転させているが、まだ標準素材移転契約が不十分である。研究用のMTAを作成したい。
遺伝資源を巡る紛争が起こった場合解決手段があるのか?
利用
PIC/MATの手続を行い入手した遺伝資源について、手続を行った旨の証明を各遺伝資源1つ1つに付けないといけないか?
利用形態の提供国理解を深めるための施策はなにがあるか?
生物多様性条約発効後採取した植物の研究を行い論文発表したいが、生物多様性条約上注意すべき点はなにが論文発表用にPIC/MAT取得の確認を行うべきか?
留学生と共同で行った遺伝資源研究を学会誌に投稿したが、提供国との共同研究との記載がないとコメントされた。どのように対応すればよいか?
研究は計画の通りにいかないので、契約の変更等が途中で必要になるが、どうすればよいか?
1993年以前に入手した野生の遺伝資源を保存している。第三者への移転はどうすべきか?
多数保有している入手元や入手年月不明の遺伝資源をどのように取り扱うか?
利益配分
利益配分として提供国にバイオリソースセンターを作りたいがどのようなことを考えればよいか?
非商用研究用のPICやMATに商用開発契約や特許出願についてどの程度まで決めればよいがその場合、金銭的利益配分はどのように取り扱えばよいか?
研究機関研究の金銭的利益配分とはなにか?
非商用研究でどの程度の金銭的利益配分を考えればよいのか?
植物由来生理活性物質特許出願に関して、出願前準備として発明者からどのような点を把握確認すべきか?発明は植物由来生理活性物質の新規活性であるが、実際の物質は、最初抽出したものであったが、のちには試薬会社から入手したものを用いた場合と2つある。
どこからでも入手可能な遺伝資源を利用した特許をインドに出願したが、インド特許審査機関の審査官から、インドでも入手可能なものなので国家生物多様性局の許可が特許審査に必要という指示があった。対処方法は?
国内措置
日本は豊かな自然を有し国内に起源を有する遺伝資源を有しているが、その実態把握がかならずしも進んでいない。日本固有の遺伝資源を確保することが重要である。日本の研究機関が世界と国際交渉を行うために、国内遺伝資源の権利を固め、正当な権利を確保する仕組みが必要ではないか?
日本が遺伝資源を提供する立場になった場合、PICを発行する機関はどこになるか?
大学の組織で、アクセスと利益配分対応を行うのは知的財産部か?
研究組織に属していないアマチュアが海外から遺伝資源を移動し、自身で研究したり大学の研究者に分譲したりすることが行われている。名古屋議定書の啓発・普及及び意見収集をどのように行うのか?

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