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ABSとは何か?

遺伝資源の利用とは何か?

これらのことから、大学で研究材料として使用する植物、動物、微生物は遺伝資源であり、海外から持ち込んだ動物・植物・微生物を利用したほとんどの研究は遺伝資源の利用に該当すると考えられる。また、厳密にどこまでが「遺伝資源」および「遺伝資源の利用」か、という疑問があるが、国際的に共通の回答は出されていない。遺伝資源(Genetic Resources) は、一般にはなじみのない言葉であるが、生物多様性条約および名古屋議定書においては頻繁に使用される。1993年に発効された生物多様性条約においては、『「遺伝資源」とは、現実の又は潜在的な価値を有する遺伝素材をいう。「遺伝素材」とは、遺伝の機能的な単位を有する植物、動物、微生物その他に由来する素材をいう』とされている。この事から、「遺伝資源とは、現実の又は潜在的な価値を有する、遺伝の機能的な単位を有する植物、動物、微生物その他に由来する素材」となる。
また、ヒトの遺伝資源は生物多様性条約の適用対象から除外されている。「遺伝の機能的な単位を有する植物、動物、微生物その他」の遺伝の機能的な単位は、遺伝子と見なされており、その他はウイルスなどを意味すると言われている。
さらに、名古屋議定書により『「遺伝資源の利用」とは、遺伝資源の遺伝的又は生化学的な構成に関する研究及び開発を行う事(条約第二条に定義するバイオテクノロジーを用いて行うものを含む。)をいう』と、記載されている。
これらのことから、大学で研究材料として使用する植物、動物、微生物は遺伝資源であり、海外から持ち込んだ動物・植物・微生物を利用したほとんどの研究は遺伝資源の利用に該当すると考えられる。また、厳密にどこまでが「遺伝資源」および「遺伝資源の利用」か、という疑問があるが、国際的に共通の回答は出されていない。
また、名古屋議定書では、派生物は『「派生物」とは、生物資源又は遺伝資源の遺伝的な発現又は代謝の結果として生じる生化学的化合物(遺伝の機能的な単位を有していない者を含む。)であって、天然に存在するものをいう。名古屋議定書第3条(e)』と定義されている。具体的にはヘビの毒汁、精油、香料など、天然状態で遺伝資源に含まれているものとなる。派生物というと、一般の研究分野では、改変したものや、掛け合わせした物を派生物と呼ぶ事があるが、名古屋議定書においては、これらは派生物ではない。

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