事前の情報に基づく合意（PIC）の取り方マニュアル

事前の情報に基づく合意（PIC）の取得について基本的方法を示す。PICは提供国によって異なる場合がある。また、詳細に取得方法を示していない場合もある。そのため、ここに掲載する基本方法を基に、それぞれの国の要求される事項に従って修正することが望ましい。

ここでは、南アフリカ共和国の規則である「Commencement of on Bioprospecting, Access and Benefi-sharing Regulations 2008」を参考として例示する。

ステップ１　申請に必要書類の準備

提供国で申請書類の形式が決まっている場合はそれに合わせる。
1.研究計画書
2.PIC申請書
バイオ探索研究申請単独またはバイオ探索研究と輸出許可申請の両方
3.素材移転契約書
4.利益配分契約書
5.確認に必要な証拠書類
遺伝資源に付随する伝統的知識および伝統的知識保持者
6.申請人を同定するのに必要な証明書

ステップ１?１　遺伝資源情報の考察と整理

1.利用する遺伝資源の同定で考察する項目
　・遺伝資源か外来種か
　・ヒト由来か
　・ペット、鑑賞植物関連か
　・国内各種法令のふくまれないこと
　・素材の起源を示す証拠収集
2.付随する伝統的知識の有無

ステップ１?２　研究内容の明確化

1.非営利研究か営利研究の可能性は
2.特許出願の可能性はあるか
3.栽培化、繁殖、遺伝子解析などの可能性

ステップ１?３　研究計画書の作成

上記考察を含む通常の研究計画内容以外に必須となる項目
1.研究成果はどのように予想するか、
2.特許化の可能性、商用研究への移行の可能性、利益見通しなどの明記
3.環境保全への影響、効果
4.提供国への利益配分の実態予想
5.報告の約束、報告の形態

ステップ１?４　PIC申請書類の作成

注意：提供国内でのみバイオ探索研究を行う場合はバイオ探索研究用のPIC申請を行う。収集した試料を日本に持ち帰り、研究を行う場合はバイオ探索研究用PICと輸出許可証の両方を申請する。提供国の規則の確認を要する。

1.バイオ探索研究用のPIC申請
法人名、申請者名、その他の申請者、その他の協力者、プロジェクト主催者、プロジェクト資金提供者
用いる遺伝資源情報
種類、量、採取地など
その他必要な認可書
提供者への情報開示状況
提供者情報
伝統的知識の有無（告示、文献情報）
伝統的知識開示状況（先住民等からの開示、文献・データベース情報）
伝統的知識保有者である先住民社会との利益配分契約
利益配分契約の紛争解決手段
プロジェクト提案
目的、利益、方法、期間、環境保護、報告義務、成果予想、
採取サンプルの破棄方法など
添付資料
参加者の身分証明書の写し
その他の認可書の写し
サイン入り素材移転契約書と利益配分契約書の写し
1.遺伝資源輸出許可書作成
輸入者情報
その他の規制書類（植物検疫、ワシントン条約規制等）
輸出の理由
2.素材移転契約書（MTA）完成
事前に提供関係者と合意し、サインしたものが必要
3.利益配分契約書（MAT）
事前に提供関係者と合意し、サインしたものが必要
5.確認に必要な証拠書類
遺伝資源に付随する伝統的知識の内容を示した書類
伝統的知識保持者から入手したPICの写し
6.申請人を同定するのに必要な証明書
パスポートの写し、大学在籍証明書、資金提供証明書など

ステップ２　申請書の提出

権威ある当局と呼ばれる政府省庁に提出する。権威ある当局は提供国の国内法令、規則等に記載されている。

ステップ３　受付

申請書に不備がないかチェックする
受領書と申請受付ナンバーを発行

ステップ４　申請料の支払い

規定に従い申請料を支払う。申請料の額は規則参照。その時、申請受付ナンバーを記載する。

ステップ５　委員会審査

申請料受領確認
申請審査委員会へ送付
（審査委員会は定期的に開催されるが頻度は多くない）
審査委員会で審査
他省、あるいは該当地方当局への照会
追加質問、資料請求

ステップ６　決定

審査委員会の決定、PIC発行担当省（環境省が多い）への推薦状発行

ステップ７　担当省審査

担当省での審議
審査基準　　　　　　　
・ 提供者の権利が確保
・ 素材移転契約が締結
・ 利益配分契約が締結
・ 申請研究が環境保全に貢献
・ 申請研究が経済に貢献
・ 申請研究が科学に貢献

ステップ８　大臣決裁

担当大臣決裁
認可証の発行
許可条件の明示

ステップ９　研究実施

PIC認可証の受領、許可条件の確認
遺伝資源利用計画の実行
定期的な報告

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