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第1回ポスト2020枠組のための作業部会およびABSワークショップ報告

第1回ポスト2020枠組のための作業部会およびABSワークショップ報告

2019年9月29日

 

生物多様性条約(CBD)の愛知ターゲットの次の目標設定となるポスト2020枠組(post 2020 Global Biodiversity Framework; ポスト2020枠組)のための作業部会(Open Ended Working Group; OEWG)の第1回会合が2019年8月27〜30日ケニア ナイロビのUNEP本部にて開催された。
また、その直前の8月25日にはABSワークショップが行われた。

1.ポスト2020枠組のための作業部会(OEWG)

OEWGでは、ポスト2020枠組の構造と将来の作業プログラムについて、整理するためのガイダンスとして、4つのクラスターにわけて討論された。

クラスター1:アウトカム指向の要素(ビジョン、ミッション、ゴール、ターゲット)
クラスター2:(取組等の)必要条件、実施手法
クラスター3:計画及びアカウンタビリティ(モニタリング、報告、レビュー)
クラスター4:横断的アプローチ及び課題

結論として

  • ポスト2020枠組の考えられる要素に関するノンペーパーが作成された(下記で説明)
  • ポスト2020枠組の開発に関する会議、協議、ワークショップの予備リストが作成された
  • 第2回のOEWGは、2020年2月(中国)、第3回は2020年7月(コロンビア)で開催される
  • ポスト2020枠組のゼロ草案テキストは、第2回会議の6週間前に発表される
  • 詳細な作業計画は共同議長と事務局長によって作成され、SBSTTA会合(2019/11/24)での共同議長の非公式書類として提示される

1)OEWGに提案された要素

作業部会の共同議長により、ポスト2020枠組の構成要素が提起された。ただし取捨選択はほとんどされていない。
要素項目は、(1)理論的根拠と範囲、(2) 2050ビジョン、(3) 2030ミッション・目標とマイルストーン、(4) 目標・サブ目標・指標、(5) 実施手段と実施可能条件、(6) 横断的な課題とアプローチ、(7) 透明性の導入・監視・レポート作成メカニズム、(8) アウトリーチ・認識・理解、である。特定の問題について合意に達したということではない。

2)各国のDSIに関する発言

DSIに関する発言は、アフリカグループに多く、カルタヘナ議定書と名古屋議定書をポスト2020枠組に統合することが重要であり、DSIに関する進捗も期待する、デジタル配列情報についてCOP15までにより明確化および合意される必要がある、などであった。
また、名古屋議定書については、「有意義な技術移転が名古屋議定書の要」のほか、各国の国家生物多様性戦略(いわゆるNBSAP)と名古屋議定書等の融合を進めるべきとの意見があった。(ENBのレポート参照)

3)考 察

第1回のOEWGはポスト2020枠組の多様な要素の収集と構造の検討が主要な目的であり、ABSの内容に特化した議論はなかった。しかし、それぞれ同様に重要であるCBDの三つの目的(生物多様性の保全・持続可能な利用・利益配分)が、実際には均衡していないことが繰り返し指摘されていた。このことから、愛知目標ではターゲット16のみであった利益配分に関する目標が、ポスト2020枠組ではより大きく取り上げられる可能性が高い。

4)参考資料

(1) CBD ポスト2020枠組 WEB ページ
https://www.cbd.int/conferences/post2020
(2) 第1回ポスト2020枠組のための作業部会 WEBページ
https://www.cbd.int/conferences/post2020/wg2020-01/documents
(3) 「2020年以降の世界的な生物多様性の枠組みにおける議論の可能性のある要素」
ディスカッション・グループの共同議長によって提出されたノンペーパー
https://www.cbd.int/doc/c/6f62/5c58/b51c8ebb49511787cc3e972d/wg2020-01-nonpaper-02-en.pdf
(4) にじゅうまるプロジェクト:OEWG全体に関する報告が詳細に記載されている。
http://bd20.jp/category/conference/1st-oewg/
(5) Eearth Negotiation Bulletin
https://enb.iisd.org/biodiv/post2020/oewg/1/

2.ABSワークショップ

OEWGの直前の8月25日にABSワークショップが同会場で開催された。目的は、ABSをCBDの他の分野との統合、ポスト2020枠組の中での位置付けなどに関する意見を収集することであった (CBD/POST2020/WS/2019/8/1, CBD/POST2020/WS/2019/8/2) 。
120名以上が参加していたと思われるが、国名でなく個人名で参加するようにとのことで、まず初めに個人名を記載し掲げるためのコピー用紙が配布された。その後は大議題3つについてグループセッションを行い、各セッションの後にリーダーから全体に対しグループ内での議論の内容を報告するという形式で行われた。グループセッションの時間は計3時間程度であった。
議論の報告は今後のOEWGに提供されるとのことであったが、報告書の内容を議論したわけではなく、決議文のようなものができたわけではない。

議題1

「本ワークショップで期待する成果」について10グループに分かれ20分程度の議論を行なった。雑多な意見が出ており内容は割愛する。

議題2

以下の3つのテーマについて6程度のグループに分かれ議論した。
1.愛知目標16(注1) によるインパクト
2.2050年に望む自然の状態
3.技術的変化を考慮したABS及び名古屋議定書

愛知目標16については、議定書の発効は達成したが、各国の法令整備にはあまり効果的でなかったとの意見が多かった。このような状況は、事務局による調査報告 (CBD/POST2020/WS/2019/8/2, para 12)でも同様であった。
関連して、条約(または議定書)での遵守委員会の設置に関する議論のほか、国ではなく地域的なABSの運用など、統一的/標準的な枠組みで先住民及び地域社会の権利を保護したいという意見が聞かれた。
技術変化については当然DSIが意識され、複数の参加者からポスト2020枠組で対処すべきとの意見が強く聞かれた。その他、BBNJ, 遺伝資源の所有権、データの管理、あらゆる利益の配分、予防的アプローチ、合成生物学、遺伝子組換え生物等に言及があった。

議題3

下記の6つの中で各自の興味に応じたテーマを選択し、グループディスカッションを行なった。(下記のテーマはいずれもABS, 名古屋議定書について)
I.  ゴール、マイルストーン及び指標
II. 条約の他の作業にどう統合するか
III. Enablers及びレビューメカニズム
IV. 先住民及び地域社会
V. 遺伝資源の塩基配列情報(DSI)
VI. 他の国際枠組みに対処・どう関与すべきか

IIでは、遺伝資源を利用した商品の持続可能な貿易による持続可能な利用のほか、第16条3(技術移転)、第8条j項(先住民・地域社会;小さな社会への利益の還元)、第9条b項及びe項 (生息域外コレクション)との関連が議論された。
IIIでは能力養成について、コースなどの公式な方法と対話をベースとするような非公式なものに分けて検討する等の議論もあった。
VのDSIについては、DSIの処遇とポスト2020枠組への同意を関連づける発言があった他、DSIと多国間利益配分(議定書第10条)の関連についてのコメントがあった。また、来年3月に行われるAHTEG(専門家会合)からの情報を待つべきだという意見もあったが、第2回のOEWGも同じく3月に予定されているため、AHTEGの議論を待つのは遅すぎるとのコメントもあった。
VIでは他の国際枠組(ITPGRやUNCLOS/BBNJ、WIPO等)と指標やCHM等についても共有されるべき等の意見が出た。

所 見

今回のABSワークショップは自由討論の形で、また国名を出さない形式であったため、ポスト2020枠組について自由な雰囲気で意見交換ができた。いくつかの意見は今後、各国の意見として浮上してくる可能性があるため、事前に情報を得ることができたことは、今後の対応を検討する上で重要な情報となった。
また、意見交換会の中では、生物多様性条約の3つの目的それぞれへ貢献できる既存の仕組みとして、生息域外コレクションの活用があると感じられた。生息域外コレクションが種の保全と持続可能な利用(提供)に重要な役割を持つことは明白であり、古くから契約書(MTA)を用いた遺伝資源の授受を行なっていたこともABSとの整合性が良い。

愛知目標16 (ABS)は特に実施が不十分であるという意見は多くあり、ポスト2020枠組では、技術移転、先住民・地域社会対応、能力構築についての強化を望む声が多かった。また、DSIについてはポスト2020枠組の重要な要素と考える参加者は多く、今後とも中心的な議題になると思われる。
名古屋議定書の利益配分はITPGRFAの利益配分と関連づけられていることや、DSIに関してもBBNJ, ITPGRFAなど他の国際枠組との整合性を求められており、2030年までに遺伝資源利用の利益配分に関してどのようなビジョンが設定されるのかは現段階では見通せない。

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注1.愛知目標16:2015年までに、遺伝資源の取得の機会(アクセス)及びその利用から生ずる利益の公正かつ衡平な配分に関する名古屋議定書が、国内法制度に従って施行され、運用される。

 

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