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研究契約の種類と利用場面

契約とは、研究を実施するに当たり予想される事態に対応したものであり、判断の方向性、基準について合意したものである。したがって、契約には、できるだけ多くの予想される事態に対応した条項を定める必要がある。金銭的利益配分などは学術研究では予想が困難であるが、困難である。

遺伝資源を利用する研究は千差万別であり、同じものはない。したがって、研究の実行にあたって想定される事態も千差万別と言わざるを得ない。起こりうる事態を想定した契約条項をそろえることは不可能である。ここでは、比較的頻繁に起こりうると考えられる事態に対処する条項を中心にまとめてある。

契約は研究計画に応じて使い分けることが必要である。単に研究素材を送ってもらう場合には簡単な素材移転契約で済む場合がある。研究所間の長年に亘る大がかりな共同研究を実施するためには、覚書と共同研究契約など複数の契約が必要になる場合もある。したがって、契約を結ぶ場合にはできるだけ詳細な計画を作成し、予想される行動、作業等を明確にしておかなければならない。

一般的に研究活動に頻繁に用いられる契約の種類は下記のものがある。これらの契約単独ですべてが網羅されない場合もあり、研究の進展によっても契約を変更する場合もあるので、いくつかの契約書タイプを使い分けることも必要である。例えば、研究所間の共同プロジェクトでは、最初覚書でプロジェクト概略を決定し、個々の研究活動はそれぞれ個別に共同研究契約を締結するのが一般的である。

表 1 契約書の種類

契約書の種類 概略
覚書(Memorandum of Understanding: MOU、 Letter of Intent: LOI) 契約書としての効力はあるが、内容は簡単な場合が多く、権利関係や責任の所在が不明な場合が多いため効力は弱い。概略を決めた契約書の補完的役割として覚書を用いることもできる。
秘密保持契約 (Non-disclosure Agreement: NDA) 未公開データやノウハウの開示に際して、秘密開 示の範囲、秘密事項の利用、秘密保持方法等につ いて定めた契約書。
研究許可契約 (Research Permit) 主に研究機関等で研究を実施する際に結ぶ契約。
研究機関等の規則の遵守が主な内容となる。
研究あるいは研究開発契約(Research or R&D Agreement) 提供国で実施する研究に用いられる契約。遺伝資源の取り扱い、素材や成果移転、利益配分などが決められる。
共同研究契約 (Research Collaboration Agreement) 研究所間などで長期に共同実施するプロジェクト等に用いられる契約。当事者の役割、目標を明確にしたものが多い。また、教育・訓練等幅広い利益配分を決める場合も多い。
ライセンス契約 (Licensing Agreement) 提供国の研究成果を実施するための実施権契約。
開発ステージのものが多い。当事者の役割と責任、金銭的利益配分を明確にすることが重要。

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