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第14回生物多様性条約締約国会議(COP14)におけるデジタル配列情報(DSI)の議論について

第14回生物多様性条約締約国会議(COP14)におけるデジタル配列情報(DSI)の議論について

2018年12月3日版

概要

生物多様性条約第14回会議および名古屋議定書第三回締約国会合が、2018年11月17〜29日エジプト シャルムエルシェイクにて、開催された。そのなかで、COP議題18およびMOP3議題17として、遺伝資源に関するデジタル配列情報(DSI)が議論された。
当初、途上国側(マレーシア、ブラジル、アフリカ勢など)が、DSI利益を多国間利益配分システムへの提供、DSIのABSトレーサビリティの調査を主張した。さらに、2020年以降の目標である、post2020枠組みへのDSIのABS方法の検討を目標とすることを提案。DSIの作業部会の設定を要望。一方先進国(EU、カナダ、ニュージーランド、韓国、日本、スイス)が、DSIの定義が不明なこと、条約の範囲に入るかどうか不明なこと、MATでのカバーが可能であること、を主張。3回のワーキンググループ、7回のコンタクトグループが開催され、COP決定およびMOP決定がなされた。

先住民の参加する専門家委員会会合の開催、公的および私的データベースの調査などの項目が入り、DSIのABSの仕組みに関して一歩進んだものとなった。
しかしながら、途中の会議用資料や途上国の公開意見にみられる原産国ではなく提供国との契約の重視や、DSIの利益の多国間の配分DSIの作業部会などの設置、などの項目は最終案には残らず、悪い条件ではなかった。引き続き、DSIのオープンサイエンスの重要性を、研究者コミュニティを通じて各国に訴えていくしかないと感じる。

ワーキンググループにおける各国の意見

途上国(アフリカ、マレーシアなど)の主張

  • 遺伝資源の利用から生じたあらゆる情報としてDSIは、生物多様性条約や名古屋議定書の適用範囲であり、利益配分の義務がある
  • ポスト2020枠組みは、DSIのABSシステム作成を目標としなければいけない
  • データベースのトレーサビリティの調査が必要である
  • Working Groupを設立して、その課題解決を検討するべき

先進国(EU、日本、韓国、ニュージーランドなど)の主張

  • ABSの対象は有形の遺伝資源のみを指す、今後の作業を行う前にDSIの定義と範囲に同意する必要がある
  • パブリック・アクセス・データベースとオープン・アクセス・データベースは、利益を共有する重要な形態
  • DSIへのアクセスと利用は、科学的研究、生物多様性の保全と持続可能な利用にとって重要と主張

その他

  • 非営利の簡単なアクセスを主張
  • WHOは、病原体に関連するDSIを世界の公衆衛生上の利益として強調し、迅速なアクセスを求めた

COP決定

I.認識事項 (主な事項のみ)

  • DSIは条約の3つの目的(保全、持続的利用、利益配分)、フードセキュリティ、ヒト、動物、植物の健康に重要
  • 多くの国でDSIを利用できるキャパビルが必要
  • DSIの生成には遺伝資源へのアクセスが必要、遺伝資源の起源とDSIの結び付が困難
  • 一部の国にはDSIの国内措置がある
  • DSIの利益配分に関す意見の違いを利益配分、提供国とのMATによる配分を強化する観点でアプローチ
  • DSIの利益配分はMATで可能

II.今後のアクション

  • 事務局が締約国や各団体等に、関連国内措置、DSIの利益配分などを調査する。
  • ピアレビュー研究を委託し、調査レポート(Fact finding and scoping study)を作成することとなった。調査項目は
  • 公的とプライベートのデータベース(アクセス許可・制御条件を含む)
  • 生物学的範囲およびサイズ、受領番号とその起源、管理方針
  • 遺伝資源に関するDSIの提供者と利用者、
  • プライベートデータベースの所有者
  • 先住民などの参加を意味する拡大AHTEGが開催されることとなった。討論内容は
  • DSIの概念を明確にする。
  • キャパシティビルディングの主要分野を特定する。
  • COP15の前に開催されるSBSTTAおよびポスト2020の枠組みの作業部会へ結果を提出する。
  • 他の政府間組織との協業

III.その他

  • トレーサビリティの不明な利益は多国間利益配分システムに配分する旨の文章は削除された。
  • 途中の作業用文章と比べて、原産地の表記が削除された

考察

途上国の結束力は強く、多くの議題で連携して行動している、今後のCOP15に向けて、DSIのABSのしくみの検討について、強く発言してくることが予想される。
対応として、さらなる「ABSの必要性と比較し、オープンサイエンスの重要性とフリーアクセスの必要性、トレーサビリティの困難性、オープンサイエンスによる各国が受けている恩恵」を各国政府、関係者に伝える必要がある。

参考

COP14web ページ
https://www.cbd.int/conferences/2018

決議文章 (14/20. Digital sequence information on genetic resources)
https://www.cbd.int/doc/decisions/cop-14/cop-14-dec-20-en.docx

生物多様性条約第14回締約国会議の結果について(環境省)
https://www.env.go.jp/press/106168.html

生物多様性条約第14回締約国会議等の結果概要(外務省)
https://www.mofa.go.jp/mofaj/ic/ge/page22_003114.html

資料1 COP決定概要(要約、本文のみ)

1.生物多様性条約の3つの目的のためのDSIの重要性を認識

2.遺伝資源のDSIが科学研究の進歩と同様に生物多様性、フードセキュリティ、人や動植物の健康に貢献する非商業活動、商業活動、に貢献していることを認識

3.多くの国で、遺伝資源に関するDSIにアクセスし、使用・生成・分析する能力がさらに必要であることを認識し、キャパシティ・ビルディング及び技術移転を適切に支援することを奨励し、生物多様性保全と持続可能な利用のための遺伝資源に関するDSIへのアクセス、使用、生成および分析を支援する。

4.遺伝資源に関するDSIの生成には遺伝資源へのアクセスが必要であるが、場合によっては、それが生成された遺伝資源とDSIを結び付けることが困難であることに留意する。

5.一部の締約国は、遺伝資源に関するアクセスと利益配分の枠組みの一環として、遺伝資源に関するデジタル配列情報へのアクセスと利用を規制する国内措置を採択したことに留意する。

6.締約国間の意見の相違が遺伝資源に関するデジタル配列情報の利用からの利益分配に関するものであることから、締約国は、現在の決定において確立されたプロセスを通じてこの相違を解決することに努めることを約束する。条約第3条及び第15条第7項の履行を強化すること。(注:条約第3条は原則、主権的権利が記載、第15条第7項は、提供国との利益配分とMATによる配分を記載)

7.遺伝資源が利用される場合、相互に合意された条件は、適用される国内措置に従って、これらの遺伝資源に関するデジタル配列情報の商業的および非商業的利用から生じる利益をカバーすることができる。

8.以下の第9項から第12項に記載されている遺伝資源に関するデジタル配列情報に関する科学および政策に基づくプロセスを確立することを決定する。

9.締約国、他の政府、先住民および地域社会、ステークホルダーと組織が意見と情報を提出する:

(a)デジタルシーケンスの関連する用語と範囲を含む概念を明確にするため
遺伝資源に関する情報、ならびにアクセスと利益配分に関する国内措置が考慮されるかどうか遺伝資源に関するデジタル配列情報;

(b)遺伝資源に関するデジタル配列情報の商業的および非商業的使用による利益配分の取り決め

10.特に、条約の3つの目的のために、遺伝資源に関するデジタル配列情報のアクセス、使用、生成および分析に関するキャパシティビルディングのニーズに関する情報を締約国、他の政府および先住民および地域社会に提出する。

11.先住民族および地域社会の参加を含む拡大AHTEGの設立を決定し、資金の許す限り理事長に要請する。

(a)上記の第9項および第10項に従って提出された意見および情報を編集および総括する。

(b) 遺伝資源に関するデジタル配列情報の概念と範囲、遺伝資源に関するデジタル配列情報が現在どのように事実発見とスコープ調査に基づいて使用されているかについての、科学に基づくピアレビューされた事実調査研究を委託する。

(c) トレーサビリティがデータベースによってどのように扱われているかを含む、デジタル情報のトレーサビリティ分野における進行中の開発についてのピアレビュー研究を委託し、遺伝資源に関するデジタル配列情報の議論にこれらの情報をどのように伝えるか。

(d)ピアレビュー研究を委託し、可能な範囲で、遺伝資源に関するデジタル配列情報の公的データベースとプライベートデータベース(アクセスが許可・制御条件を含む)、データベースの生物学的範囲およびサイズ受託番号とその起源、管理方針、遺伝資源に関するデジタルシークエンス情報の提供者と利用者、プライベートデータベースの所有者の必要な情報を提供することを奨励する。

(e)遺伝資源に関するデジタル配列情報の商業的および非商業的利用から生じる利益配分に関する国内措置の取り組みの方法についてのピアレビュー研究を委託し、研究および開発のための遺伝資源に関するデジタル配列情報の使用に取り組む。段落に記載された提出物

(f)拡大AHTEGの会議を開催し、

(i)上記の意見と情報、およびピアレビュー研究の作成と統合を検討する。

(ii)操作上の選択肢の選択肢と、特に第11項(b)にいう調査を考慮して、遺伝資源に関するデジタル配列情報に概念的な明快さを与えることの意義を開発する。

(iii)キャパシティビルディングの主要分野を特定する。

(iv)締約国会議の第15回会合の前に開催される…の会合による検討のためにその成果を提出すること。

12.COP決定書14 / – に基づいて設立されたオープンエンドの作業部会に、拡張AHTEGの成果を検討するよう要請する。ポスト2020生物多様性枠組みの背景にある遺伝資源に関するデジタル配列情報の取り扱いに関するCOP15に提言することを提案した。

13.事務局長に対し、他の政府間組織と協力して、上記で定義したプロセスを知らせ、問題の分野でこれらの組織が生み出す作業、アプローチ、結果を考慮に入れるよう要請する。

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